『--手術ミスで70代患者死亡 鳥取大病院--
鳥取大病院(鳥取県米子市)は26日、人工呼吸器をつける際の気管切開ミスによる出血で米子市の70代男性患者が死亡したと発表した。
男性は16日、同大病院に意識不明の状態で救急搬送され、小脳出血のため手術を受けた。男性の意識は戻らず、21日、気管を切開し人工呼吸器を取り付けたが、約1時間後に口や気管に挿入したチューブ内に出血が見つかった。再び切開したが出血場所が見つからず、男性は間もなく死亡した。
届けを受けた米子署が司法解剖した結果、死因は気管に血がたまったことによる窒息死だった。のどの横の静脈が2カ所切れており、詳しい原因を調べている。
石部裕一(いしべ・ゆういち)病院長は「患者に申し訳ない。調査委員会を開き防止策を検討したい」としている。』
大学病院が自らミスと言っているのだったら手術ミスということでいいのだろうが,死因が血液による窒息であったのだとしたら私にはちょっと疑問が残る.
気管切開による手術ミスで私の記憶にある最も悲惨なものは小樽市の病院であった頚動脈を切断したというものである.さすがに頚動脈切断ではそれ自体手術ミスといえるのだろう.しかし,のどの横の静脈が2カ所切れて出血してもそれが気管内に流れこまなければ窒息はしないはずである.気管カニューレにはカフが付いているので,正常に機能していればたとえ出血があっても気管内には流入しないはずである.
再び切開したとあるが,出血点を探す前に経口挿管してまず気道が確保できていれば気管内に流入した血液も吸引できて窒息は回避できた可能性はある.とは言えこれを一人で落ち着いてできる医師はベテランで研修医レベルでは困難であろう.
気管切開術やその後の処置をした医師に関する情報はないが,小脳出血のため手術を受けたとあるのでおそらくは脳外科医またはその指導で研修医が行ったのであろう.血だらけになり焦りながら出血点を夢中で探しているうちに呼吸停止そして心停止となったであろう現場を想像すると冷や汗が出る思いだ.
患者さんは小脳出血のため意識不明であり,おそらくは救命のために手術を受けたのであろうからこんなことで亡くなったのではなんのために救命したのかわからない.かといって気管切開をしなければおそらく長期の生存は不可能であったのだろう.亡くなった患者さんや家族もお気の毒だが,患者を失ってしまった医師の精神的なダメージは計り知れないものがあるはずである.
きっとまた業務上過失致死で刑事告訴されるのだろう.診療報酬引き下げや給与がまた下がるなんて話はこれに比べればどうでもいい話である.でも人のために働いてもミスしたら刑事処分されるというのだけは勘弁してもらえないものなのだろうか.リピーターは困るがなんとか立ち直って脳外科医として頑張って欲しいような気がするのは私だけだろうか.
鳥取大病院(鳥取県米子市)は26日、人工呼吸器をつける際の気管切開ミスによる出血で米子市の70代男性患者が死亡したと発表した。
男性は16日、同大病院に意識不明の状態で救急搬送され、小脳出血のため手術を受けた。男性の意識は戻らず、21日、気管を切開し人工呼吸器を取り付けたが、約1時間後に口や気管に挿入したチューブ内に出血が見つかった。再び切開したが出血場所が見つからず、男性は間もなく死亡した。
届けを受けた米子署が司法解剖した結果、死因は気管に血がたまったことによる窒息死だった。のどの横の静脈が2カ所切れており、詳しい原因を調べている。
石部裕一(いしべ・ゆういち)病院長は「患者に申し訳ない。調査委員会を開き防止策を検討したい」としている。』
大学病院が自らミスと言っているのだったら手術ミスということでいいのだろうが,死因が血液による窒息であったのだとしたら私にはちょっと疑問が残る.
気管切開による手術ミスで私の記憶にある最も悲惨なものは小樽市の病院であった頚動脈を切断したというものである.さすがに頚動脈切断ではそれ自体手術ミスといえるのだろう.しかし,のどの横の静脈が2カ所切れて出血してもそれが気管内に流れこまなければ窒息はしないはずである.気管カニューレにはカフが付いているので,正常に機能していればたとえ出血があっても気管内には流入しないはずである.
再び切開したとあるが,出血点を探す前に経口挿管してまず気道が確保できていれば気管内に流入した血液も吸引できて窒息は回避できた可能性はある.とは言えこれを一人で落ち着いてできる医師はベテランで研修医レベルでは困難であろう.
気管切開術やその後の処置をした医師に関する情報はないが,小脳出血のため手術を受けたとあるのでおそらくは脳外科医またはその指導で研修医が行ったのであろう.血だらけになり焦りながら出血点を夢中で探しているうちに呼吸停止そして心停止となったであろう現場を想像すると冷や汗が出る思いだ.
患者さんは小脳出血のため意識不明であり,おそらくは救命のために手術を受けたのであろうからこんなことで亡くなったのではなんのために救命したのかわからない.かといって気管切開をしなければおそらく長期の生存は不可能であったのだろう.亡くなった患者さんや家族もお気の毒だが,患者を失ってしまった医師の精神的なダメージは計り知れないものがあるはずである.
きっとまた業務上過失致死で刑事告訴されるのだろう.診療報酬引き下げや給与がまた下がるなんて話はこれに比べればどうでもいい話である.でも人のために働いてもミスしたら刑事処分されるというのだけは勘弁してもらえないものなのだろうか.リピーターは困るがなんとか立ち直って脳外科医として頑張って欲しいような気がするのは私だけだろうか.
コメント
いつも拝見しております。
この記事の内容と関係なくて申し訳ないのですが、
よろしかったら先生のブログをうちのブログとリンクさせて
頂いてもよろしいでしょうか?
臨床では各科の専門によりいろんなことがわかって進歩しているのに、法医学では全科の進歩に追いついていないのでは?という印象を持ちました。そのような状況なのに臨床で頑張っている医師たちが、このレベルの基準で処罰されてしまうのはなんだかなという気がします。先生はどう考えられますか?
ちなみに医療ミスの判断は最終的には裁判所の判断です。警察医や法医学は解剖結果を示すだけで処罰はしません。
それからこのニュースも微妙ですね。静脈が2本切れていたとは書いてあるものの、その静脈からの出血が気管内に垂れ込んだとはどこにも書いていない。だけど出血で窒息というのも腑に落ちない。脳外科医先生のおっしゃられるように医師がテンパったのが一番の死因っぽいですが、真実はいつも闇の中ですね。裁判しても結果が真実とは限らないし。