『--自分に麻酔剤注射し死亡 福井大病院の女性医師--

 福井大病院(福井県松岡町)の医師当直室で、麻酔科の女性医師(29)が腕に注射針を刺した状態で死亡していたことが14日、分かった。

 福井県警や同病院によると、死亡推定時刻は5日午後11時ごろで、6日朝に出勤してきた男性医師が発見した。遺体脇には手術用麻酔剤「プロポフォール」の容器と注射器が落ちていた。同病院では、疲れなどを紛らわすために麻酔剤を使い、量を誤って死亡したとみている。

 女性医師は同僚や両親に「個人的な悩みがある」などと打ち明け、不眠に悩んでいた様子もあったという。自宅からは空になった麻酔剤の容器8本が見つかった。

 この女性医師は勤務先の神奈川県こども医療センター(横浜市南区)で今年春、向精神薬を無断で自分に注射したとして、8月に戒告処分を受けて同医療センターを辞め、9月16日付で福井大病院に採用されていた。

 福井大病院の上田孝典(うえだ・たかのり)院長は「福井医科大(現福井大)出身の医師で、反省していると思って採用した。麻酔剤の管理は適切だったと思うが残念だ」と話した。』

 このニュースを単に麻酔科医の薬物乱用事件としたり妙齢の女医だから好奇心で見た人も多いのではないだろうか.今年春の向精神薬を無断で自分に注射した件もニュースになったような気もするが麻酔科医の薬物乱用は昔からあることなのであまり気にも留めなかったのではっきりした記憶がない.

 だが,麻酔科医は鎮静剤や麻酔薬が手に入りやすく使用法も心得ているから心に問題があるとこういう落とし穴にはまってしまいニュースになりやすいと考えられはしないだろうか.いい医者でいるためにはストレスの自己コントロールは重要であると思うが,それが自分でできないような状況になったらどうすればいいのだろうか.

 今でも臨床では徒弟制度のような上下関係が医師の間に残っているところが多いと思うが,上司との関係がよければ部下が上司に相談する昔ながらのことも可能であろう.だが,最近の医師の人間関係はそうあるのは難しいと思う.大学からの派遣によるにせよ自分で就職するにせよ医師の流動性が高まった結果,昔のような家庭的な人間関係は形成しにくくなったと思われる.

 その一方で,病院の経営上の問題から医療事故そして患者や家族との関係において仕事のストレスは増える一方であるから,ストレスを溜め込んでしまうような医師は一人で悩むことになるであろう.それがまた仕事の集中力をなくすという悪循環におちいる可能性もある.これは本人のみならず患者にとっても危険なことではないだろうか.

 上司にしても責任の増大と人手不足によるストレスがあっても誰にも相談できない孤独な状態にある場合が多いであろう.特に自分のこれからのことを考えて明るい気持ちになる医師はほとんどいないのではないだろうか.

 もちろん医師がすべてそういう状態にあると言うつもりはないが,医師には病院にかかる暇もないことが多いから自分の病院にちょっと話や悩みを聞いてくれるセラピストがいてくれればどんなに救われることだろうか.私は,このような人がいてくれる病院は聞いたことがないが,医療事故や患者や家族との無用なトラブルを避けるためにもこれからは必要だと思うのだがどうだろうか.できれば病院機能評価の中にも入れてもらえれば最も望ましいのだが..

コメント

ゆき
ゆき
2005年12月16日14:48

ドルOカムを自己注してた人ですよね。
同じ神奈川県内の病院だったので覚えています。

以前いた病院にはリエゾンDrとNsがいて、メンタル面でのフォローがされていたのですが
それを当たり前と思っていたら、そんな病院にはまだ出会えてないです。

従業員のメンタル面でのフォローを1番に取り組むべき病院が、いちばんそういう対応に遅れてる気がします。

フローレン
2005年12月19日22:18

倫理感のうすい時代でやさしくて真面目な人は生きずらいような気がします。職場のストレスは利害関係が発生するからかなりしんどいです。特に女性にとっては過酷です。鉄の心がほしいです。 

nophoto
ジュリアス
2005年12月20日0:46

メンタル面の管理も問題でしょうが、医師が「量を間違って」麻酔剤を自分に使用、そして死亡というのがまず信じられません。患者に注射するときも同じだけ使っていたのですか?致死量を・・・。量を誤ったとかそんな単純なことではないのでは、と思ったりします。

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索