感情論では解決しない
2005年12月1日 医療の問題 コメント (3)『--医療ミス事件の判決要旨--
東京女子医大医療ミス事件で東京地裁が30日、元同病院医師佐藤一樹被告に言い渡した無罪判決の要旨は次の通り。
【死因】
被告は、女児=当時(12)=の心臓手術で、体外循環を行う人工心肺装置の操作を担当した。手術中に女児の体から装置に血が行かなくなったのは、装置の圧力を低く保つことができなかったためで、その直接的かつ決定的な原因は、装置内外の温度差で発生した水滴がガスフィルターに吸着して目詰まりし、吸引力が伝わらなくなったためと考えるのが合理的だ。
【予見可能性】
被告の過失責任を問うには、人工心肺の長時間使用でフィルターが目詰まりし、血液が循環不能の状態になる一連の仕組みを予見できることが必要。医師が順守すべき注意義務は、その医師を取り巻く診療条件などを前提に、当時の臨床医療の一般水準に従って判断すべきだ。
被告はフィルターが取り付けられていることや、手術中に結露が生じることは知っていたが、目詰まりの危険性と結び付けて考えたことはなかった。同僚のほかの医療関係者にも、この事態を想定した者はなかった。そのほかの医師の証言や文献を検討しても、当時の臨床医療の一般水準という観点から見て、被告が手術の際に目詰まりの危険性まで予見できたとは認めがたい。
客観的には装置にフィルターを取り付ける必要性は乏しく、むしろ危険でさえある。このような人工心肺の構造には瑕疵(かし)があると言うほかない。しかしこの装置は特定機能病院の承認を受けた東京女子医大で、経験を積んだ医師らによって開発され、それなりに有効な体外循環装置として長年事故もなく使用されてきた。
開発に携わったわけでもない被告が、もともと危険な構造であることに気付かなかったとしても、責めるのは酷な面がある。その他、事故時の被告の行動や諸状況を検討しても、循環不良の発生を予見できたことを認定することは困難だ。
【結論】
証拠を総合しても、被告に予見可能性を認め難い以上、事故を回避するために何らかの措置を講じることができたとも認められない。過失責任を問うことはできない。』
合理的な判断でこのように判決の要旨をわかりやすく報道することは今後も必要だと思う.
『父の歯科医利明(としあき)さん(55)は「運転手が事故を起こしても、車の構造を知らないなら無罪になるようなもの。医師は事故が起きた時の対応力が問われているのに...」と不満を口にした。
母むつ美さん(45)も「人工心肺は勝手に動いているわけではない。なぜ動かしていた医師の責任が問えないのか納得できない」と怒りをあらわにした。
』
ご両親の不満は一部の引用であろうが,車の構造的欠陥で事故が起きた場合は運転手も当然被害者であろうし,人工心肺に限らず医療機器というものはたとえ原理を知っていても医師がとっさの故障に対応できることはむしろ稀なことであるのが現実である.
大事な娘を事故で失ったのは大変お気の毒であるが,医療の進歩とは過去もそういった犠牲の上に成り立ってきていることも部分的には真実であるのだから医学発達の恩恵を受ける以上は患者側もリスクを受け入れるのでなければ医療は成り立たないだろう.医師側に明らかな過失がないと判断されたこのケースはそう言う意味で医療行為における医師の安全責任のひとつの限界を示したもので非常に意義があるものだと私は思うのだがどうだろうか.
東京女子医大医療ミス事件で東京地裁が30日、元同病院医師佐藤一樹被告に言い渡した無罪判決の要旨は次の通り。
【死因】
被告は、女児=当時(12)=の心臓手術で、体外循環を行う人工心肺装置の操作を担当した。手術中に女児の体から装置に血が行かなくなったのは、装置の圧力を低く保つことができなかったためで、その直接的かつ決定的な原因は、装置内外の温度差で発生した水滴がガスフィルターに吸着して目詰まりし、吸引力が伝わらなくなったためと考えるのが合理的だ。
【予見可能性】
被告の過失責任を問うには、人工心肺の長時間使用でフィルターが目詰まりし、血液が循環不能の状態になる一連の仕組みを予見できることが必要。医師が順守すべき注意義務は、その医師を取り巻く診療条件などを前提に、当時の臨床医療の一般水準に従って判断すべきだ。
被告はフィルターが取り付けられていることや、手術中に結露が生じることは知っていたが、目詰まりの危険性と結び付けて考えたことはなかった。同僚のほかの医療関係者にも、この事態を想定した者はなかった。そのほかの医師の証言や文献を検討しても、当時の臨床医療の一般水準という観点から見て、被告が手術の際に目詰まりの危険性まで予見できたとは認めがたい。
客観的には装置にフィルターを取り付ける必要性は乏しく、むしろ危険でさえある。このような人工心肺の構造には瑕疵(かし)があると言うほかない。しかしこの装置は特定機能病院の承認を受けた東京女子医大で、経験を積んだ医師らによって開発され、それなりに有効な体外循環装置として長年事故もなく使用されてきた。
開発に携わったわけでもない被告が、もともと危険な構造であることに気付かなかったとしても、責めるのは酷な面がある。その他、事故時の被告の行動や諸状況を検討しても、循環不良の発生を予見できたことを認定することは困難だ。
【結論】
証拠を総合しても、被告に予見可能性を認め難い以上、事故を回避するために何らかの措置を講じることができたとも認められない。過失責任を問うことはできない。』
合理的な判断でこのように判決の要旨をわかりやすく報道することは今後も必要だと思う.
『父の歯科医利明(としあき)さん(55)は「運転手が事故を起こしても、車の構造を知らないなら無罪になるようなもの。医師は事故が起きた時の対応力が問われているのに...」と不満を口にした。
母むつ美さん(45)も「人工心肺は勝手に動いているわけではない。なぜ動かしていた医師の責任が問えないのか納得できない」と怒りをあらわにした。
』
ご両親の不満は一部の引用であろうが,車の構造的欠陥で事故が起きた場合は運転手も当然被害者であろうし,人工心肺に限らず医療機器というものはたとえ原理を知っていても医師がとっさの故障に対応できることはむしろ稀なことであるのが現実である.
大事な娘を事故で失ったのは大変お気の毒であるが,医療の進歩とは過去もそういった犠牲の上に成り立ってきていることも部分的には真実であるのだから医学発達の恩恵を受ける以上は患者側もリスクを受け入れるのでなければ医療は成り立たないだろう.医師側に明らかな過失がないと判断されたこのケースはそう言う意味で医療行為における医師の安全責任のひとつの限界を示したもので非常に意義があるものだと私は思うのだがどうだろうか.
コメント
この場合、なぜDrが人工心肺をまわしたんでしょうか。
CE(ME)が行うものではないんですか?
そこが気になってしまうのですが...。
そういえば麻酔科が足りなくて、脳外は夜間の緊急opeは
自家麻酔のことが多かったなぁ....。
前の病院。
同じような感じでしょうか。
DrもNsも全ての職員がきっちり揃ってる潤った病院ってのは
どこにあるんでしょう。