医師数だけの問題じゃない
2005年11月30日 医療の問題 コメント (1)『--麻酔科医の労働条件、過酷 是正求め、労基署に申告--
麻酔科医の労働条件が手術の安全性を損なうほど過酷な状態にあり、労働基準法違反だとして、大阪府池田市の市立池田病院の麻酔科主任部長(50)が29日、淀川労働基準監督署に是正措置を求めて申告した。
申告書によると、麻酔科の医師は昨年12月から1人欠員の3人で、非常勤の医師が毎週3、4人勤務。連日1-5時間の残業を強いられ、3日に1度は時間外の呼び出しに応じられるよう待機態勢を取らなければならないため緊張状態が解けないなどとし、「過重労働で患者の安全に直結する問題」と訴えている。
病院側は、今年になって午後8時以降に麻酔科医を呼び出したのは5回だけで過重な負担ではないと反論。全国的に麻酔科医が不足しており、欠員の補充は難しいという。
黒川正典(くろかわ・まさのり)病院長は「医師の労働条件の緩和と待遇改善について検討している」とコメントした。』
医師の労働時間は基本的には病院の診療時間と同じで9時から17時で昼休み1時間を除いた7時間で1日分と計算されるそうである.ただし,病院の診療時間がそれより長いとそれで1日分で7時間以上でも同じ1日分の計算になるそうだ.これが診療報酬の請求のときに問題となる医師数の計算法の元になっている.当直をした場合はまた別の計算式で加算される.
つまり当直の場合を除くと1日診療時間時間以上働いてもそれらは一切計算には入らない.つまり病院側からみると診療報酬上のメリットはなにもないわけである.医師に時間外手当てがない理由はおそらくこんなところではないだろうか.まあ,特殊勤務手当てとか勤勉手当とかいうものはあるがこれは働く時間に関係なく一定で公的病院では上司も部下もあまり関係がないようだ.
ところで医師の時間外勤務には当直の他に待機というものがありこれは緊急時には病院に行く義務がある.そうなると家に帰ってもいつ電話が来るかと思えばストレスがたまる.実際の呼び出しが多ければ当直とあまり変わらないし,少なくとも酒を飲んで酔っ払っているわけにはいかないし遠出することもできないが,待機していることに対する報酬と言うものはない.
「連日1-5時間の残業を強いられ、3日に1度は時間外の呼び出しに応じられるよう待機態勢を取らなければならないため緊張状態が解けない」とあるが常勤の3人で対応しているから3日に1度なのであろう.これがどの程度大変かは医師でなければわからないだろうし,医師の感覚や体力あるいは精神力の個人差も関係してくるだろう.
ちなみに脳外科医の場合は公的病院では2−3人で待機し,月に1−2回程度病院当直があり,待機の時は平均1回は病院の救急室に呼び出されるのが普通という感覚だった.自分が待機でなくとも緊急手術になれば全員病院へ行くのがあたりまえの世界なので真面目にやると夜遊びなどもできるわけがない.術者であれば常時体調を整えていつでも手術できなければならないわけだ.
たぶん昔からの考え方ではこれで良かったし,脳外科医も今まではそうだと思っていたのだが,考えてみるとこれって働きすぎなのではないだろうか.特に外科の手術に夜中に付き合わされる麻酔科にしてみれば文句のひとつも言いたくなるのは理解できる.場合によっては朝まで麻酔をかけなければならないんだから.私は麻酔科にはいつもお世話になっているので麻酔科の味方である.
ところで労働基準監督署は同じ厚労省の管轄のはずであるが,医師の労働状態をちゃんと監督する気はあるのだろうか.医療の安全確保は現在重大な問題であると思うが厚労省はこういった医師数に出てこない勤務実態をちゃんと把握しているだろうか.いや,おそらく診療報酬には関係ないから気にしていないだろう.それに医療事故が起きても訴えられるのは医師と病院だけで過労やストレスは理由にならないからであろう.
結局はニュースのように自分から訴えないと誰も真剣には考えてくれないのである.多くの脳外科医もただ一生懸命働くだけでこの問題には立ち向かう気力もない.中には時間外まで働くのが当たり前だと自分で自分を納得させているような哀れな人もいる.だが,若い脳外科医は当直と待機だけで厭になりクリニック開業するものがあとを絶たないのである.
最近,「健康保険に税金を使っているのだから医師はみんな公務員だ」などと言った役人がいた.「医師の給料は高すぎる」とプロパガンダしたマスコミもいた.だが,ほとんどの勤務医がこんな労働条件で頑張っていることを知っているのだろうか.麻酔科の先生には頑張ってもらって労働条件の改善のために一石を投じてほしいものだ.
麻酔科医の労働条件が手術の安全性を損なうほど過酷な状態にあり、労働基準法違反だとして、大阪府池田市の市立池田病院の麻酔科主任部長(50)が29日、淀川労働基準監督署に是正措置を求めて申告した。
申告書によると、麻酔科の医師は昨年12月から1人欠員の3人で、非常勤の医師が毎週3、4人勤務。連日1-5時間の残業を強いられ、3日に1度は時間外の呼び出しに応じられるよう待機態勢を取らなければならないため緊張状態が解けないなどとし、「過重労働で患者の安全に直結する問題」と訴えている。
病院側は、今年になって午後8時以降に麻酔科医を呼び出したのは5回だけで過重な負担ではないと反論。全国的に麻酔科医が不足しており、欠員の補充は難しいという。
黒川正典(くろかわ・まさのり)病院長は「医師の労働条件の緩和と待遇改善について検討している」とコメントした。』
医師の労働時間は基本的には病院の診療時間と同じで9時から17時で昼休み1時間を除いた7時間で1日分と計算されるそうである.ただし,病院の診療時間がそれより長いとそれで1日分で7時間以上でも同じ1日分の計算になるそうだ.これが診療報酬の請求のときに問題となる医師数の計算法の元になっている.当直をした場合はまた別の計算式で加算される.
つまり当直の場合を除くと1日診療時間時間以上働いてもそれらは一切計算には入らない.つまり病院側からみると診療報酬上のメリットはなにもないわけである.医師に時間外手当てがない理由はおそらくこんなところではないだろうか.まあ,特殊勤務手当てとか勤勉手当とかいうものはあるがこれは働く時間に関係なく一定で公的病院では上司も部下もあまり関係がないようだ.
ところで医師の時間外勤務には当直の他に待機というものがありこれは緊急時には病院に行く義務がある.そうなると家に帰ってもいつ電話が来るかと思えばストレスがたまる.実際の呼び出しが多ければ当直とあまり変わらないし,少なくとも酒を飲んで酔っ払っているわけにはいかないし遠出することもできないが,待機していることに対する報酬と言うものはない.
「連日1-5時間の残業を強いられ、3日に1度は時間外の呼び出しに応じられるよう待機態勢を取らなければならないため緊張状態が解けない」とあるが常勤の3人で対応しているから3日に1度なのであろう.これがどの程度大変かは医師でなければわからないだろうし,医師の感覚や体力あるいは精神力の個人差も関係してくるだろう.
ちなみに脳外科医の場合は公的病院では2−3人で待機し,月に1−2回程度病院当直があり,待機の時は平均1回は病院の救急室に呼び出されるのが普通という感覚だった.自分が待機でなくとも緊急手術になれば全員病院へ行くのがあたりまえの世界なので真面目にやると夜遊びなどもできるわけがない.術者であれば常時体調を整えていつでも手術できなければならないわけだ.
たぶん昔からの考え方ではこれで良かったし,脳外科医も今まではそうだと思っていたのだが,考えてみるとこれって働きすぎなのではないだろうか.特に外科の手術に夜中に付き合わされる麻酔科にしてみれば文句のひとつも言いたくなるのは理解できる.場合によっては朝まで麻酔をかけなければならないんだから.私は麻酔科にはいつもお世話になっているので麻酔科の味方である.
ところで労働基準監督署は同じ厚労省の管轄のはずであるが,医師の労働状態をちゃんと監督する気はあるのだろうか.医療の安全確保は現在重大な問題であると思うが厚労省はこういった医師数に出てこない勤務実態をちゃんと把握しているだろうか.いや,おそらく診療報酬には関係ないから気にしていないだろう.それに医療事故が起きても訴えられるのは医師と病院だけで過労やストレスは理由にならないからであろう.
結局はニュースのように自分から訴えないと誰も真剣には考えてくれないのである.多くの脳外科医もただ一生懸命働くだけでこの問題には立ち向かう気力もない.中には時間外まで働くのが当たり前だと自分で自分を納得させているような哀れな人もいる.だが,若い脳外科医は当直と待機だけで厭になりクリニック開業するものがあとを絶たないのである.
最近,「健康保険に税金を使っているのだから医師はみんな公務員だ」などと言った役人がいた.「医師の給料は高すぎる」とプロパガンダしたマスコミもいた.だが,ほとんどの勤務医がこんな労働条件で頑張っていることを知っているのだろうか.麻酔科の先生には頑張ってもらって労働条件の改善のために一石を投じてほしいものだ.
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