『--検査怠りがんで死亡 日赤と医師に賠償命令--
肝硬変を患っていた北海道北見市の男性=当時(67)=が肝がんで死亡したのは日本赤十字社(東京)が開設する病院の医師が検査を怠り、がんの発見が遅れたためだとして、妻子が計約6400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁は18日、日赤と医師に計約3600万円を支払うよう命じた。
判決理由で笠井勝彦(かさい・かつひこ)裁判長は「肝がん発症の可能性が高い肝硬変を患っていたにもかかわらず、がんを早期発見するための検査をしなかった」と医師の注意義務違反を認定。日赤の使用者責任も認めた。
病院側は「検査を勧めたが断られた」と主張したが、笠井裁判長は「患者から断られた場合、検査の重要性を十分説明すべきだ。1度断られたことが検査を怠ったことを正当化するものではない」と退けた。
判決によると、男性は1990年8月、北見赤十字病院(北海道北見市)の内科を受診し、肝硬変と診断され、毎月1回通院していた。医師は2カ月に1度は腫瘍(しゅよう)マーカーの検査をしなければならなかったが、98年12月の検査後、約7カ月間検査しなかった。この間に数値が増加し肝がんの兆候が出ていたのに早期に発見できず、男性は2000年1月に死亡した。
北見赤十字病院は「判決を踏まえ、今後の対応を検討したい」としている。』
「外来で2ヶ月に1度は腫瘍マーカーの検査をしなければならない.」なんて言うのがレセプトの監査を通るのかどうかは内科医ではない私にはわからない.2ヶ月毎に検査していれば肝がんが発見できて,しかも延命できたかどうかもわからない.医療の結果に仮定の話を持ち込むなんて無意味だと思う.
しかし,外来で投薬中の患者が採血を嫌がることはよくあることだ.薬の副作用のチェックのために必要性を説明しても聞き入れない変わり者も現実に存在する.この判決はこれら変わり者の患者の家族にとってはいい話だろう.
医師の立場で考えれば,結局は検査をしなかったことが悪いということで,たとえ検査を執拗に勧めて患者と険悪な状態になったとしても医師の責任は逃れられないということをこの裁判官が言っているように聞こえることだろう.それとも患者が外来に来るたびに検査を勧めて拒否されたということをカルテに記載すれば責任を問わないとでも言うのだろうか.
いずれにしてもこの記事を読んだ多くの医師は自己防衛ための検査とカルテ記載に今より多くの時間を必要とし,外来での各種検査の頻度は増大し,ひいては医療コストのさらなる増大を招くだろう.とは言っても社会保険庁は医療費削減のため外来での検査を抑制すべく査定をしているわけで頻回の検査はきびしく査定する.査定されれば検査代は病院がかぶることになる.どうやら査定と訴訟の狭間での自己防衛が求められる時代になったようである.
肝硬変を患っていた北海道北見市の男性=当時(67)=が肝がんで死亡したのは日本赤十字社(東京)が開設する病院の医師が検査を怠り、がんの発見が遅れたためだとして、妻子が計約6400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁は18日、日赤と医師に計約3600万円を支払うよう命じた。
判決理由で笠井勝彦(かさい・かつひこ)裁判長は「肝がん発症の可能性が高い肝硬変を患っていたにもかかわらず、がんを早期発見するための検査をしなかった」と医師の注意義務違反を認定。日赤の使用者責任も認めた。
病院側は「検査を勧めたが断られた」と主張したが、笠井裁判長は「患者から断られた場合、検査の重要性を十分説明すべきだ。1度断られたことが検査を怠ったことを正当化するものではない」と退けた。
判決によると、男性は1990年8月、北見赤十字病院(北海道北見市)の内科を受診し、肝硬変と診断され、毎月1回通院していた。医師は2カ月に1度は腫瘍(しゅよう)マーカーの検査をしなければならなかったが、98年12月の検査後、約7カ月間検査しなかった。この間に数値が増加し肝がんの兆候が出ていたのに早期に発見できず、男性は2000年1月に死亡した。
北見赤十字病院は「判決を踏まえ、今後の対応を検討したい」としている。』
「外来で2ヶ月に1度は腫瘍マーカーの検査をしなければならない.」なんて言うのがレセプトの監査を通るのかどうかは内科医ではない私にはわからない.2ヶ月毎に検査していれば肝がんが発見できて,しかも延命できたかどうかもわからない.医療の結果に仮定の話を持ち込むなんて無意味だと思う.
しかし,外来で投薬中の患者が採血を嫌がることはよくあることだ.薬の副作用のチェックのために必要性を説明しても聞き入れない変わり者も現実に存在する.この判決はこれら変わり者の患者の家族にとってはいい話だろう.
医師の立場で考えれば,結局は検査をしなかったことが悪いということで,たとえ検査を執拗に勧めて患者と険悪な状態になったとしても医師の責任は逃れられないということをこの裁判官が言っているように聞こえることだろう.それとも患者が外来に来るたびに検査を勧めて拒否されたということをカルテに記載すれば責任を問わないとでも言うのだろうか.
いずれにしてもこの記事を読んだ多くの医師は自己防衛ための検査とカルテ記載に今より多くの時間を必要とし,外来での各種検査の頻度は増大し,ひいては医療コストのさらなる増大を招くだろう.とは言っても社会保険庁は医療費削減のため外来での検査を抑制すべく査定をしているわけで頻回の検査はきびしく査定する.査定されれば検査代は病院がかぶることになる.どうやら査定と訴訟の狭間での自己防衛が求められる時代になったようである.
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