経営難は自治体病院の生活習慣病じゃないの
2005年11月20日 医療の問題 コメント (1)『--医師確保対策を要望 自治体病院危機で大会--
市立病院など自治体が設置、運営する病院の関係者による「自治体病院危機突破全国大会」が17日、東京都内で開かれ、過疎地や離島など医師不足に悩む地域の病院で医師を確保する対策を国に求める決議をした。
大会では、(1)大学医学部の入学定員で地元出身者を優先する「地域枠」の拡大働き掛け(2)小児科や産科の医師不足など診療科別の偏りの改善(3)看護師など医療従事者の地域的な偏りの解消-などを国に要望することを決定。終了後、厚生労働、総務など4省と与党に要望書を提出した。
全国自治体病院開設者協議会(会長・増田寛也(ますだ・ひろや)岩手県知事)や全国知事会など9団体の主催で、自治体の首長や議員ら約300人が参加した。
現状報告をした全国自治体病院協議会の小山田恵(こやまだ・けい)会長(岩手県立病院名誉院長)は「自治体病院は医師不足と経営難が大きな課題になっている。医師の偏りは、都道府県間だけでなく県内の地域間にもあり、対策が必要」と指摘した。』
「自治体病院は医師不足と経営難が大きな課題になっている」なんて言ってますが,問題の本質は経営難だけである.採算のとれない病院をつくったり,必要以上の人件費を事務員のために使うから採算がとれないというのが一番の理由である.採算が取れないから医師や看護師の給与も事務員と一律に減らすというのでは定年退職まで働かない派遣医師やもともと流動性の高い看護師が居つくはずはない.
給与のことを除いても都市部と比較して過疎地や離島など医師不足に悩む地域の病院で働くことに何かメリットがなければ最近の若い医師はそんなところに行ったりするはずがないのは明らかである.診療科の医師数の動向を見ても拘束時間が長く,診療報酬上のメリットの低そうな科はみごとに避けられているのがわかる.
これを医師の質の低下と言う事もできただろう.医師は生命倫理に敏感で人格的に優れているべきであると期待され,社会的にも尊敬されている時代ならそうだろう.しかし,現在では地方都市の自治体病院で診療しても住民の信頼だとか地域の期待などというものを特別感じることは非常に少なくなった.むしろ,地方にいるが故に「都会の病院に紹介しろ」だの「こんなところで治療できるんですか」だの言われ続ければさっさと辞めたくなるだろう.
ついでに言うと,地方自治体病院の職員は出張医などなんとも思っていない.なにか問題があってもまた次が大学から派遣されてくると思っているのだろう.だから,非常に待遇が悪いというかはっきり言って態度が悪い.それに比べて定年まで働く医師にはぺこぺこするのである.こんな地方の病院を2,3箇所まわればもう地方巡りはたくさんだと思う若手医師が大量生産される.地元出身者を優先する「地域枠」を拡大しても大学の偏差値が下がるだけで卒業後は地方出身の医師はむしろ都会に住みたがる傾向があることも知らないのだろうか.
もともと潜在的に地方勤務を希望する医師などいなかったのだが,名義貸し問題から医局による医師派遣が問題となり,医局の求心力が弱まった(というか医局という言葉も死語になりつつある)ことで地方に行けといわれたら「医局辞めます」と言いやすくなったのである.マスコミが医師派遣や医療事故で必要以上に騒いでくれたおかげで派遣される医師も人道的配慮という殻を脱ぎ捨てるのが容易になったのではないだろうか.
今,マスコミがやっている医師たたきのキャンペーンは「医師の給与は高すぎる」なのだろうが,医療レベルは医師の所得に比例して(もしかしたらそれ以上に)下がることは予想していないのだろうか.この国の政治とマスコミがGDP比で先進国中最低レベルの医療費をさらに削減するために医師の給与を下げ,先進国中最高レベルの医療がそれなりのレベルに下がるのだったら仕方がないということでいいのだろうか.
市立病院など自治体が設置、運営する病院の関係者による「自治体病院危機突破全国大会」が17日、東京都内で開かれ、過疎地や離島など医師不足に悩む地域の病院で医師を確保する対策を国に求める決議をした。
大会では、(1)大学医学部の入学定員で地元出身者を優先する「地域枠」の拡大働き掛け(2)小児科や産科の医師不足など診療科別の偏りの改善(3)看護師など医療従事者の地域的な偏りの解消-などを国に要望することを決定。終了後、厚生労働、総務など4省と与党に要望書を提出した。
全国自治体病院開設者協議会(会長・増田寛也(ますだ・ひろや)岩手県知事)や全国知事会など9団体の主催で、自治体の首長や議員ら約300人が参加した。
現状報告をした全国自治体病院協議会の小山田恵(こやまだ・けい)会長(岩手県立病院名誉院長)は「自治体病院は医師不足と経営難が大きな課題になっている。医師の偏りは、都道府県間だけでなく県内の地域間にもあり、対策が必要」と指摘した。』
「自治体病院は医師不足と経営難が大きな課題になっている」なんて言ってますが,問題の本質は経営難だけである.採算のとれない病院をつくったり,必要以上の人件費を事務員のために使うから採算がとれないというのが一番の理由である.採算が取れないから医師や看護師の給与も事務員と一律に減らすというのでは定年退職まで働かない派遣医師やもともと流動性の高い看護師が居つくはずはない.
給与のことを除いても都市部と比較して過疎地や離島など医師不足に悩む地域の病院で働くことに何かメリットがなければ最近の若い医師はそんなところに行ったりするはずがないのは明らかである.診療科の医師数の動向を見ても拘束時間が長く,診療報酬上のメリットの低そうな科はみごとに避けられているのがわかる.
これを医師の質の低下と言う事もできただろう.医師は生命倫理に敏感で人格的に優れているべきであると期待され,社会的にも尊敬されている時代ならそうだろう.しかし,現在では地方都市の自治体病院で診療しても住民の信頼だとか地域の期待などというものを特別感じることは非常に少なくなった.むしろ,地方にいるが故に「都会の病院に紹介しろ」だの「こんなところで治療できるんですか」だの言われ続ければさっさと辞めたくなるだろう.
ついでに言うと,地方自治体病院の職員は出張医などなんとも思っていない.なにか問題があってもまた次が大学から派遣されてくると思っているのだろう.だから,非常に待遇が悪いというかはっきり言って態度が悪い.それに比べて定年まで働く医師にはぺこぺこするのである.こんな地方の病院を2,3箇所まわればもう地方巡りはたくさんだと思う若手医師が大量生産される.地元出身者を優先する「地域枠」を拡大しても大学の偏差値が下がるだけで卒業後は地方出身の医師はむしろ都会に住みたがる傾向があることも知らないのだろうか.
もともと潜在的に地方勤務を希望する医師などいなかったのだが,名義貸し問題から医局による医師派遣が問題となり,医局の求心力が弱まった(というか医局という言葉も死語になりつつある)ことで地方に行けといわれたら「医局辞めます」と言いやすくなったのである.マスコミが医師派遣や医療事故で必要以上に騒いでくれたおかげで派遣される医師も人道的配慮という殻を脱ぎ捨てるのが容易になったのではないだろうか.
今,マスコミがやっている医師たたきのキャンペーンは「医師の給与は高すぎる」なのだろうが,医療レベルは医師の所得に比例して(もしかしたらそれ以上に)下がることは予想していないのだろうか.この国の政治とマスコミがGDP比で先進国中最低レベルの医療費をさらに削減するために医師の給与を下げ,先進国中最高レベルの医療がそれなりのレベルに下がるのだったら仕方がないということでいいのだろうか.
コメント
いささか下世話な愚痴になりますが、27箇所も県立病院のある岩手でその県立病院を辞めました。隣の県立病院と車で30分も離れていません。非常に無駄です。
医師は分散しているため、過重労働を余儀なくされています。
県は住民を説得せず、病院集約に及び腰です。勤務医の給与は一見高そうですが、岩手の場合、中堅クラスは基本給が40数万から50数万円位、あとは特殊勤務手当。
自分の場合、10年過重労働して疲れ果て退職。しかし自己都合退職のため退職金は基本給×8年のおよそ三百数十万円でした。この金額を看護師たちでさえ信じません。一千万位は貰っているのだろうと言います。
そんなことは知らず、県民の、相当金持ちだと思われている勤務医に対する要求は多く、医師は疲労し、どんどん退職しています。
何故医師が辞めていくのか、定時退庁する事務方やえらい先生方はお分かりないようです。
現場との温度差が大きすぎます。