『--手術数による報酬加算廃止 生存率向上と因果関係なし 厚労省、来年4月から--

 厚生労働省は21日、来年4月の診療報酬改定で、一定数以上の手術件数を満たした病院に対する報酬加算を廃止する方針を固めた。同制度は医療の質を高めることを狙って導入されたが、手術件数と患者の生存率向上など治療成績との因果関係が見られないとする調査結果が発表され、制度の存在意義が薄れたと判断した。

 制度は2002年4月、1年間に実施された手術数が一定数に満たない病院の手術料を3割減額する仕組みとしてスタート。しかし「手術数の少ない過疎地の病院などで必要な手術ができなくなる」などの声を受け、04年度からは、患者への積極的な情報提供などの条件を満たせば、減額をしないことにし、このほか、一定の手術数を満たした場合には報酬を5%加算する仕組みに変更した。

 こうした中、今年6月、外科手術に関連した学会でつくる外科系学会社会保険委員会連合が723施設、22万件のデータを分析し、手術件数と治療結果との因果関係が相関しているとは言えないとする調査結果を発表した。

 同省はこの結果を受けた形で廃止を検討。「制度導入時は、手術数と治療成績は関係があるとの米国の研究結果を参考にしたが、それに反論する研究まで確認できていなかった。根拠がない以上、制度を続けられない」(保険局)としている。

 ただ、医師個人では技量と手術件数の関連はあるとみられ、同省は難易度や時間、技術力を踏まえた新たな評価方式を検討する方針だ。』

 手術数をクリアするために適応の無い手術をひたすらやるしかなければ事故も当然増加するだろう.手術数の少ない地方の病院の外科医はやる気をなくすか,症例数の多い病院へすでに移ってしまっている.脳外科志望の学生はほとんどいないだろう.
 
 大学からの派遣の場合も手術数の多い病院を希望する研修医が多いために手術数の少ない病院に経験のある専門医が多く,救急などで症例数の多い病院には手術をたくさんしたい研修医が多いというのが現実だから症例数が多いほうが事故のリスクは高いとみるのが専門家だろう.

『手術数と治療成績は関係があるとの米国の研究結果を参考にした』とは責任逃れの言い訳にしか聞こえない.そもそも米国とは医療の事情が違うことはわかっていたはずであるから制度の導入時にちゃんと検討しなかったではすまされない.いかにも官僚的な無責任な発言に怒りを感じる外科医は私だけではないだろう.

 それでもまだ懲りないのか『ただ、医師個人では技量と手術件数の関連はあるとみられ、同省は難易度や時間、技術力を踏まえた新たな評価方式を検討する方針だ。』などと言っているのにはあきれるだけだ.これは長時間勉強した人ほど点数がいいと言っているようなもので学習曲線というものがわかっていないようである.医療は結果で評価されるものであって,結果が同じなら報酬も同じであるべきで,技量や時間は直接関係ないだろう.

 そして診療報酬は手術の難易度で決定されるべきであるのは当然のことであるが,技術を習得するのにかかる時間も難易度に組み入れて欲しいものだ.脳外科医は一人前になるのに10年はかかる(10年やっても一人前にならない人もいる)のであるから難易度に技術の習得にかかる時間も考慮に入れてくれるのでなければ脳外科医不足は解消されないだろう.

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