医療ミスという言葉のミスマッチ
2005年6月12日 医療の問題A.『--呼吸器交換後に心肺停止 杏林大病院、看護師ミスか--
東京都三鷹市の杏林大病院で今月3日に人工呼吸器の交換後に男性患者(76)が心肺停止状態となり、その2日後に無酸素脳症で死亡していたことが10日、分かった。警視庁三鷹署は業務上過失致死容疑で捜査を始めた。
調べでは、男性患者は慢性腎不全で3月に入院して人工呼吸器をつけていたが3日、呼吸器を交換した直後に呼吸できなくなった。担当の女性看護師(23)が排気用のキャップを外し忘れた可能性があるという。
病院側は3日、三鷹署に「医療ミスがあった」と届けた。』
人工呼吸器の取り扱いに問題があったのが事実であれば医療ミスであるということに異存はない.業務上過失致死罪となるのだろう.
だが,次のケースは疑問の余地があると思う.
B.『--医療ミスで600万賠償--
神奈川県厚木市は、同市立病院で受けた手術の麻酔ミスが原因で左脚に障害が残った30代の女性に対し、600万円の損害賠償を支払う方針を決め、承認を求める議案を9日、市議会に提出した。
市によると、女性は2003年10月28日に手術を受けた後、左脚に知覚過敏の症状を訴え、検査の結果、硬膜外麻酔のミスで脊髄(せきずい)神経を損傷していたことが判明。現在も症状はあるが、日常生活に支障はないという。
岡部武史(おかべ・たけし)院長は「医療事故には十分注意してきたが、今後も医療安全の向上を図り、再発防止に努めたい」としている。』
硬膜外麻酔であればこのようなことは麻酔の合併症として知られていることであって術前に説明が十分になされているのであれば事故と言うには根拠が薄いと思われる.最近の医療訴訟の傾向として説明が不十分であることを指摘されることもあるが,患者側にも自分の身を守るという意味で医師まかせにせず自分で治療の合併症について説明を求める権利と義務があると思う.
結果だけで補償を求めるのであれば現在の健康保険の診療報酬体系ではまったくもって不完全で,考えられる合併症の頻度に応じた保険料を上乗せしなければ外科医は手術をできなくなるだろう.そのようなことになれば結果として手術を必要とする患者さんに望ましい医療を提供することは不可能となるだろう.
結果が思わしくなかったものをすべて医療事故と呼ぶのはそれでも結構だが,医療ミスというのは明らかな過失が証明されるものだけにしてもらいたいものだ.どんなに経験を積んだ医師がやっても技術的な点から起こり得るものについてまでミスといわれるのはまじめにやっている現場の医師のやる気を失わせ,訴訟対策に防衛医療の傾向をより強めるものだろう.
現場の医師がやる気を失うということは患者にとっては治療の機会を失うということと同義だということにマスメディアもそろそろ気づくべきであろう.
東京都三鷹市の杏林大病院で今月3日に人工呼吸器の交換後に男性患者(76)が心肺停止状態となり、その2日後に無酸素脳症で死亡していたことが10日、分かった。警視庁三鷹署は業務上過失致死容疑で捜査を始めた。
調べでは、男性患者は慢性腎不全で3月に入院して人工呼吸器をつけていたが3日、呼吸器を交換した直後に呼吸できなくなった。担当の女性看護師(23)が排気用のキャップを外し忘れた可能性があるという。
病院側は3日、三鷹署に「医療ミスがあった」と届けた。』
人工呼吸器の取り扱いに問題があったのが事実であれば医療ミスであるということに異存はない.業務上過失致死罪となるのだろう.
だが,次のケースは疑問の余地があると思う.
B.『--医療ミスで600万賠償--
神奈川県厚木市は、同市立病院で受けた手術の麻酔ミスが原因で左脚に障害が残った30代の女性に対し、600万円の損害賠償を支払う方針を決め、承認を求める議案を9日、市議会に提出した。
市によると、女性は2003年10月28日に手術を受けた後、左脚に知覚過敏の症状を訴え、検査の結果、硬膜外麻酔のミスで脊髄(せきずい)神経を損傷していたことが判明。現在も症状はあるが、日常生活に支障はないという。
岡部武史(おかべ・たけし)院長は「医療事故には十分注意してきたが、今後も医療安全の向上を図り、再発防止に努めたい」としている。』
硬膜外麻酔であればこのようなことは麻酔の合併症として知られていることであって術前に説明が十分になされているのであれば事故と言うには根拠が薄いと思われる.最近の医療訴訟の傾向として説明が不十分であることを指摘されることもあるが,患者側にも自分の身を守るという意味で医師まかせにせず自分で治療の合併症について説明を求める権利と義務があると思う.
結果だけで補償を求めるのであれば現在の健康保険の診療報酬体系ではまったくもって不完全で,考えられる合併症の頻度に応じた保険料を上乗せしなければ外科医は手術をできなくなるだろう.そのようなことになれば結果として手術を必要とする患者さんに望ましい医療を提供することは不可能となるだろう.
結果が思わしくなかったものをすべて医療事故と呼ぶのはそれでも結構だが,医療ミスというのは明らかな過失が証明されるものだけにしてもらいたいものだ.どんなに経験を積んだ医師がやっても技術的な点から起こり得るものについてまでミスといわれるのはまじめにやっている現場の医師のやる気を失わせ,訴訟対策に防衛医療の傾向をより強めるものだろう.
現場の医師がやる気を失うということは患者にとっては治療の機会を失うということと同義だということにマスメディアもそろそろ気づくべきであろう.
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