『--バイパス血管切り患者死亡 新潟県立がんセンター--

 新潟県立がんセンター新潟病院(田中乙雄(たなか・おつお)院長)は27日、新潟市の70代の男性患者に実施した手術で、心臓へのバイパスになっていた動脈を知らずに切り離し、患者が心筋梗塞(こうそく)で死亡したと公表した。

 病院によると、5日午前に胆のう摘出などの手術をした際、胃の動脈が傷つき出血。患者は以前に別の病院で受けたバイパス手術で、この動脈を心臓につなげていたが、外科部長の執刀医(44)は気付かずに止血のため切り離した。

 その後、動脈が心臓につながっていたことが分かったが、患者の状態が安定していたため、執刀医は手術を続けた。しかし、術後に患者の血圧が低下。バイパスの動脈を再びつなげる手術をしたが容体は改善せず、5日夜に死亡した。血管を切り離したことが、心機能を低下させたとみられるという。

 執刀医は、患者のバイパス手術を知っていたが、どの血管をバイパスに使っているのか確認しなかった。

 田中院長は「患者とご遺族に衷心よりおわび申し上げる。今後は慎重な情報把握に努める」と話している。』

 執刀医の外科部長は業務上過失致死罪を免れることができるのだろうか.患者も医師も誠にお気の毒な話ではあるが,執刀医は2つの点で最善をつくさなかったことの責任をとらざるを得ないだろう.

 ひとつは患者のバイパス手術を知っていたが、どの血管をバイパスに使っているのか確認しなかったということで,もう一点は動脈が心臓につながっていたことが分かった時点で再吻合するなどの処置を試みなかったことである.

 手術前のリスクの評価として既往歴は非常に大切な場合があるが,術野が近い過去の手術はその最たるものであろう.脳外科でも以前に開頭術をしていた場合に脳が周囲と癒着していて手術が非常に困難なことがあったり,血管吻合術を受けた患者さんに別な手術をしなければならない場合などは吻合した血管の処理にかなり気を使うことになる.

 それ以外の一般的な既往歴として高血圧,糖尿病,虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞),喘息などは術中,術後の合併症のリスクが高く要注意であるが,病状が悪いか不安定な場合は専門医に相談し麻酔科にもリスクの評価をしてもらうことになる.

 こういった術前のリスクの評価がきちんとなされないと術者は予期しないトラブルに巻き込まれるわけだ.だから,術者は自分でこれらの確認をすべきなのだが,大きな病院ほど術者も忙しいのかこれらを人まかせにしてしまう傾向があるような気がする.これも大病院の知られざるリスクだろう.

 いずれにしても最近の傾向としては知らなかったではすまされないわけで,知っていたのに対応を誤ったのであればさらに責任は重いだろう.

 そういえば羽田空港の管制官の方々は工事で使用中止の滑走路に新千歳と帯広からの便を着陸させようとしたそうだ.帯広からの便は確認はしたものの管制にしたがってそのまま着陸したそうだが,新千歳からの便の機長は確認後に自分の判断で管制に従わずに別な滑走路に着陸したそうである.

 外科医であれば私は後者の機長のようなリスクマネージメントのできる執刀医が理想だと思うのだがどうだろうか.

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