『--抗がん剤の専門医制混乱 2学会が別々に認定試験予定--
 抗がん剤によるがん治療の専門医制度をめぐって、医学界に混乱が起きている。内科系の日本臨床腫瘍(しゅよう)学会(会員約3000人)と外科系の日本癌(がん)治療学会(会員約1万4000人)の2学会が別々に専門医制度をつくり、今秋に初の認定試験を予定しているからだ。歩み寄りの兆しはなく、このままでは、専門医制度を医師や病院の選択基準にしようとする患者にまで混乱が及びそうだ。
 先行したのは、優れた腫瘍内科医の育成を目標にする日本臨床腫瘍学会だ。02年に「臨床腫瘍専門医」の創設を決め、現在研修を行っている。今年11月に初の認定試験を予定する。
 抗がん剤は副作用が強いうえ、市販後も医師主導の臨床試験を通して標準治療の改良に取り組む特徴がある。人口が日本の約2倍の米国には約9000人の腫瘍内科医がいるとされ、同学会は日本の必要数を3000〜4000人とみている。
 理事長の西條長宏・国立がんセンター東病院副院長は「系統的なカリキュラムにのっとって学び、薬物治療に精通した医師を育てることこそ、学会の役割だ」と話す。
 一方、日本癌治療学会は昨年10月、「がん治療専門医」制度の創設を決めた。初試験は今年10月の予定だ。
 同学会は会員の半数が外科医。日本の大学には臨床腫瘍学の講座がほとんどなく、外科医が手術と並行して抗がん剤治療をしてきた経緯がある。外科医の水準向上を目的に、臨床腫瘍専門医よりはるかに多い2万人の専門医養成を目指す。
 北島政樹理事長(慶応大学医学部長)の下で制度づくりに当たる久保田哲朗・同大助教授(消化器外科)は「腫瘍内科医と外科医が分業してがん患者の治療に当たれる病院は一握り。多くのがん患者は外科医による薬物治療を受けている。外科医の薬物治療のレベルを上げることが重要ではないか」と話す。
 外科領域の基盤学会である日本外科学会は癌治療学会の動きに反対の立場だ。「『がん治療専門医』を認定する必然性を感じない。将来的に外科医の仕事から薬物療法を切り離すよう働きかけるべきだ」とする文書を癌治療学会あてに送った。だが、2学会とも既定路線を突き進んでいる。
 日本専門医認定制機構の酒井紀(おさむ)・代表理事は「統一的な研修カリキュラムや認定基準を作り、制度を一本化しないと国民のためにならない」といい、2学会に話し合いを呼びかけている。』

 脳外科に関する最近できた専門医制度といえば血管内治療の専門医と脳卒中専門医である.日本脳神経血管内治療学会と日本脳卒中学会が認定している.日本脳神経血管内治療学会の方は脳外科医の会員が多いかもしれないが,日本脳卒中学会の方は大半が神経内科もしくは内科医であると思われる.

 日本脳神経外科学会で脳卒中の内科的治療が取り上げられることはほとんどないためか,内科的治療も含めて実際の治療にあたってきた脳外科医に脳卒中専門医の認定を学会独自で行うようなことはしていない.この点で癌治療学会の動きはどうも外科医の仕事から薬物療法を切り離したくないように見える.

「『がん治療専門医』を認定する必然性を感じない。将来的に外科医の仕事から薬物療法を切り離すよう働きかけるべきだ」という考え方には私は賛成だ.脳卒中の治療も内科的なものはすべて脳卒中専門医の認定を受けた脳神経内科医にやってもらいたい.そうすれば脳外科医不足も解消されて脳外科医は本来の手術治療に専念できるわけである.

実際はそう簡単ではないことはわかっているが,今まで地域の脳卒中治療に貢献したつもりでいても脳卒中学会に属さなければ専門医認定もしないというのであれば脳外科医としてはやっぱり手術治療に専念したいというのが本音なわけである.

 

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