『--麻酔科医不足、学会が解消案 負担軽減など提言--
 手術中の患者の全身状態を管理する麻酔科医の不足が深刻なことから、日本麻酔科学会(花岡一雄理事長、会員9287人)は、麻酔科医の負担軽減や女性医師が働きやすい環境の整備などの対策を盛り込んだ提言をまとめた。近く、厚生労働省や日本医師会、日本病院会に提出する。
 麻酔科医は年々増えているが、手術件数も増加の一途をたどっている。全身麻酔の手術を行う全国の約4千病院のうち、同学会員の常勤麻酔科医がいる施設は半数しかない。高齢や合併症など高リスクの患者の手術が増え、患者の医療安全への関心が高まっていることも麻酔科医の需要を押し上げる。少ない人数で多くの仕事をこなす労働環境の悪さから勤務先を辞める麻酔科医も多く、人員不足に拍車がかかる。負担軽減策として、(1)術前の薬剤や麻酔機器の準備を薬剤師や臨床工学技士に担当してもらうなど医師以外の職種を活用する(2)予定される手術は特定の曜日に集中させない(3)手術時間を左右する要因を分析し、時間の適正化に努める――などを挙げている。
 また、34歳以下の年齢層では麻酔科医の4割が女性であるとし、託児所を充実させ、働きやすい環境を整えるよう訴えている。
 診療報酬でも麻酔科医の技術料が適切に評価されておらず、それが若くて体力のある麻酔科医を少数雇用し、より多くの手術を行わせようとする傾向を助長しているとして、報酬上の配慮を厚労省に求めている。』

 現在でも麻酔科医がいないため外科医が麻酔をかけて看護師にモニターしてもらいながら手術をしている病院が多いのだろう.だが,もしそれですべてうまくいくのなら麻酔科医の需要はここまで伸びなかったはずである.

 人手不足を理由に一人の医師がなんでもやらなければならないと言うのではリスクマネージメントはできるわけがない.ある意味で分業し細分化することで医療は高度化できたのであろう.麻酔が麻酔専門医によって行われるようになったのも安全性を考えれば当然のことであろう.

 問題は診療報酬の設定にあるのだと思う.今のところ麻酔専門医がかけても外科医がかけても診療報酬上の差はないし,2つ以上の手術を一人の麻酔科医がかけても同様である.つまり麻酔科専門医がかけることを診療報酬上はまったく評価していないのである.

 これでは外科医が麻酔をかけれれば麻酔科医がいないほうがコストの削減になるし,仮に麻酔科医がいても相対的に麻酔科医不足にしたほうが利益が上がることになる.つまり安全マージンを低くしたほうが儲かることになる.リスクが大きいほど利益が大きいという図式が病院に当てはまっていいものだろうか.

 病床あたりの看護師数は診療報酬に反映するようになっている.手術数あたりの麻酔科専門医の数が診療報酬に反映されなければ麻酔科専門医の価値は看護師ほどないことになるのではないだろうか.私は麻酔科医のお世話になることが多いし,長い時間の手術に付き合ってもらうこともあるので麻酔科医の肩を持つわけではないが,麻酔専門医のかける麻酔の技術料はもっと正当に評価すべきであろう.

 脳外科の手術の技術料についても同じことが言える.今の診療報酬では手術料の中に医療材料費をまるめるようなことをしたり,破裂動脈瘤と未破裂脳動脈瘤の差がなかったりとおかしなことが多いのである.脳外科医は一人前になるのに10年はかかる.破裂動脈瘤などではリスクも高い.それに比べると手術料はバーゲン価格というのでは脳外科医になる気はなくなるだろう.
 
 医療不信をまねくような医療事故や医療訴訟のニュースを毎日目にするようになり病院経営が難しい最近の状況では献身的に働くことは以前より難しくなってきている.現実には勤務医は医師といえどもサラリーマンである.労働環境を厚生労働省が積極的に改善してくれないことには労働条件の悪い診療科目の医師は減少し医療の質の確保も難しくなるだろう.

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