先日,近郊の町立病院の整形外科医から電話で患者さんの依頼があった.

 5日前に転倒して頭部を打撲したが,3日前の昼頃に突然頭が痛くなってきたので町立病院を受診した.頭部CTを撮ったら右のシルビウス裂の上の方に小さな白いものが写っていて右のシルビウス裂の見えが悪いと言う.担当の整形外科医は頭部打撲による脳挫傷と脳浮腫を疑っているようだった.

 しかし,この話から私は脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血を疑ったので,搬送のことをたずねたら,患者さんが自分で車を運転して来院するようなことを言うので危険だから救急車で搬送するように伝えた.

 搬入後に持参した町立病院のCTでやはりクモ膜下出血だった.頭部MRAで前交通動脈瘤をみとめた.発症後時間が経っているので脳血管攣縮の危険もあったが,正月の休日体制下で再破裂されると困るので緊急手術した,経過は良好である.

 脳神経外科専門医なら初診時の頭部CTでほぼ間違いなくクモ膜下出血の診断をつけるだろうが,研修医にはわからないだろうし,他科の医師でも頭部CTを見慣れていないと動脈瘤破裂には思いいたらなくとも不思議ではない.もっともCTがなくとも頭痛の発症時のことを患者さんによく聞けば鑑別診断でまず第一に考えるべきものである.

クモ膜下出血の頭痛の特徴は0から100になる頭痛だということだ.突然に頭をなぐられたかのように痛くなるらしい.私の経験でも電話で息子を怒鳴った瞬間にとか,パチンコで777が出た瞬間にとか,妻と久しぶりにの最中に突然激しい頭痛がしてという例がある.重症な場合はそのまま意識を失ったり呼吸が停止する.

歩いて外来に来ることをWalking SAHなどというが,出血が少なくて頭痛だけが唯一の症状の場合の診断が一番難しいのである.突然の激しい頭痛という発症の特徴だけが唯一の手がかりというわけである.

なぜ,突然にこんな事を書いたのかというと,いつもお正月休みにはクモ膜下出血の患者さんがやって来て緊急手術になるので,今日書いておけばゆっくり休めるような気がしたからである.

今年も半分愚痴のような拙文を読んでいただいた皆さまには大変感謝しております.くれぐれも飲み過ぎ,食べ過ぎ,騒ぎ過ぎに注意してどうぞよいお年をお迎えください.

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