『--心臓手術後3人死亡、同じ医師が執刀 東京医大--
 東京医科大学病院(東京都新宿区)の第二外科で、02年10月から昨春にかけ、男性の心臓外科医(45)が執刀した心臓弁膜症の手術で、患者3人が術後に相次いで死亡していたことがわかった。遺族は東京簡裁に証拠保全を請求。同簡裁は10日、3人のカルテなどの保全手続きをした。今年1月にもこの外科医が助手を務めた手術で男性患者が死亡していた。同病院は事実関係の調査を始めた。
 遺族側の説明によると、最初の死亡事例は東京都杉並区の女性(71)。02年10月、心臓弁の閉鎖不全と急性心不全のため、この外科医の執刀で手術を受けた。しかし、術後に心臓から出血し、再手術を数回受けたが03年1月下旬に死亡した。03年1月には、同区の女性(81)が手術後、意識が戻らず、12日後に死亡した。同年3月には、心臓弁の閉鎖不全や狭心症などを起こした東京都中野区の女性(68)が、この外科医の執刀で、弁置換手術と冠動脈バイパス手術を同時に受けた。だが、術後に出血が止まらず、再手術を繰り返した後、4月中旬に死亡した。
 男性医師は3人の遺族らに対し、「合併症などが原因」などと説明したという。病院などによると、この外科医は同大の出身。心臓血管外科専門医や日本循環器学会専門医などの資格を持ち、現在は第二外科で講師を務めている。これまで約1000件の心臓手術にかかわり、うち約270件で執刀医を務めた。弁膜症の手術も約190件に加わり、21件で執刀した。同病院広報室は「現段階では医療過誤であったという認識には至っていないが、このような事態になったことは遺憾に思う。第三者を含む調査委員会を持ち、事実関係の究明に当たりたい」としている。

 弁膜症手術は広く行われている。特に人工弁に置き換える弁置換手術の数は多く、専門家によると成功率は90%を超す。一方、狭くなった部分を広げたり、広い部分を縫い縮めたりする弁形成術はある程度の熟練が必要という。ただし、弁置換でも、心臓の筋肉が弱った高齢者の場合には、出血して再手術が必要になるケースもあるという。』

弁膜症の手術21件の執刀で手術が直接の原因で術後1週間以内に3人死亡なら問題だろう.記事をよく読むと再手術を繰り返したのが2例あり,最初の手術から死亡するまでの期間が数週間あるのでこれでは直接の原因かどうかはわからない.手術後に意識が戻らず12日後に死亡したというのはやはり手術が原因だろうか.

まあ,いずれにしても弁置換手術の成功率は90%を超すそうだから21例で3例死亡させるようでは外科医としては恥ずべき成績だろう.だが,成功率90%は果たして安全なのだろうか?実は私には安全なような気がまったくしないのである.成功率で言うなら私が安全と考えるのは成功率99.5%以上というところだろう.

現実には脳外科の手術で成功率99.5%を超える手術は存在しないだろう.脳血管撮影という検査でさえも1%のリスクがあると言われているくらいである.手術に比べてリスクが少ないとマスコミで騒がれた脳血管内手術がその後に医療事故として再びマスコミのねたとなったのも記憶に新しい.

そもそも手術に成功率を考える意味はあるのだろうか.統計学的に考えるなら,病気の程度,患者の体力,術者の腕,スタッフの質,病院の設備など様々な要因で成り立つ手術の成功確率はもともと各患者で異なっているのだからそれを病名や手術名が同じものをひとつにして論じる意味がどこにあるのだろうか.

手術を治療としてみた場合に統計学的に意味があるのは患者の年齢における平均余命に対して,手術をして期待できる延命期間がどれほどあるのかということだけだろう.それも遷延性意識障害になって延命というのでは意味がない.目の前に患者がいるから手術をするだけというのでは外科医として真摯な態度ではないだろう.

患者の家族にすれば大学病院で手術することに期待もあったのだろうが,手術は外科医がするものである以上,施設の手術数や病院の規模は手術の結果とは関係ないのだ.手術の成功率だって米国みたいにリスクの高い患者の手術はしないことにすれば上げることは簡単だろう.

問題は手術の数でもなく成功率でもなく病気に対して延命効果があるかどうかだけだと思うのだが,これを統計学的に明らかにするいい方法を私は知らない.

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