『厚生労働省によると、2002年度の1年間に使った国民医療費は約31兆1200億円。前年度に比べ0・6%減った。前年度比でマイナスとなったのは、介護保険制度が始まった2000年度(1・9%減)以来のことで、わずかでも医療費が減ることは財政的には喜ばしいことかもしれない。だが、医療現場では「患者が検査や治療を控える受診抑制の傾向が見られ、この先が心配だ」との声が聞かれる。症状が軽いときにきちんとした治療を受けないと、症状が重くなってしまう。結果として国民の健康を損なうだけではなく、かえって医療費を増やす恐れがあるというのだ。医療費の無駄は徹底して排除しなければならないが、受診抑制が度を越せば元も子もなくなる。医療費減少には正確な分析と冷静な判断が必要だ。医療費の減少には、いくつかの原因が考えられるが、初の診療報酬引き下げ(薬価を含め平均マイナス2・7%)が最大の原因であることに異論はないだろう。今でも医療関係団体や開業医には不評だが、物価や賃金の下落が続く中で、医療の値段を引き下げの例外としなかった判断は決して間違っていない。それでも、少子高齢化で若者に比べて病気にかかりやすい高齢者が増えていることや現状の医療水準を考えると、ある程度、医療費が増え続けることは避けられない。問題は受診抑制が、会社員や公務員ら健康保険など被用者保険の加入者に加え、高齢者の間にも浸透し始めていることだ。日本医師会総合政策研究機構の調査では、老人保健制度の加入者にも02年ごろから医療費の減少傾向が出始め、03年10月の時点で前年同月比1・5%減となった。ちなみに被用者保険の加入者は3・3%も減った。一方、被用者保険の家族と国民健康保険の加入者はともに増加傾向にある。つまりサラリーマンらと高齢者の間に受診抑制が起きている。高齢者が受診を控える背景として、02年度の医療制度改革などに伴う高齢者の負担増が考えられる。例えば、同年10月から、70歳以上の窓口負担が定率1割(所得の多い人は2割負担)となったり、一定額以上の医療費が払い戻される「償還制」で自己負担の上限額が引き上げられたりした。政府は、社会保障制度の財源について「お年寄りにも応分の負担を」と訴え続けている。財政難の折、所得の多い高齢者に応分の負担を求めることは当然だが、高齢者世帯の多くが年収400万円に満たない。生活費の柱である年金への不安が広がる中で、医療費の負担増は痛い。厚労省が指摘するように、65歳以上が国民医療費の49%(02年度)を使っていることは確かであり、老人医療費をどうするかは国家的な課題だ。だが、高齢者やサラリーマンが家計への影響を心配し、病院や診療所に足を運ばなくなるのは、国民の健康増進を掲げる国民皆保険制度の理念から逸脱している。』

本当の医療費の無駄とは病気で無い人が病院にかかり健康保険を使うことだろう.それ以外は無駄ではない.医療費の自己負担を懸念して受診抑制することは本当に病気だった場合はかわいそうだが医療費抑制を目的としている以上こういった状態は避けようがないだろう.そもそも先進国で最低レベルの医療費をさらに下げようというのだから国民皆保険制度の理念など言うのは無意味だろう.

政府は、社会保障制度の財源について「お年寄りにも応分の負担を」と訴え続けていると言うが,医療費を抑制するなら国民にも応分の負担として医療サービスの質の低下を受け入れてもらうしかないだろう.医療に資本主義の原理を持ち込めばそういう結末になるだろう.

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