クローン誕生や産み分けも実質自由化か?
2004年7月12日『人間の受精卵(ヒト胚(はい))やヒトクローン胚を使う研究のあり方を検討している政府の総合科学技術会議生命倫理専門調査会(薬師寺泰蔵会長)の最終報告書案全文が12日、判明した。焦点となっているヒト胚の作成と利用に対する規制は、法律ではなく国の指針(ガイドライン)を新たに整備し、実際の審査は大部分を日本産科婦人科学会(日産婦)にゆだねることにした。報告書案は13日の会合に報告されるが、強制力のある法律で規制すべきだとの意見も多く、委員からの反発が必至だ。同調査会はこれまで、不妊治療研究でのヒト胚作成を認め、6月23日の会合ではヒトクローン胚作りも難病などの基礎研究に限り容認した。薬師寺会長はこれを受け、研究の規制の枠組みを中心に報告書案を作成した。ヒト胚研究の規制について、報告書案は「強制力を有する法制度として整備するのは、倫理観や生命観の押し付け的な側面があって、極めて難しい」と判断し、強制力のない指針で十分とした。規制方法は「問題の性質上、専門家の知見が重要」だとして、日産婦を念頭に「生殖補助医療技術の専門家の団体が指針に基づく審査を行い、定期的に国に報告する」と規定した。国は日産婦に属さない研究者や、日産婦が判断できない問題の審査のみに対応すべきだとし、事実上、日産婦に規制を「丸投げ」した。ヒトクローン胚作成は現在、クローン技術規制法に基づく指針で禁止されており、作成を認めるための指針改正を検討する。クローン胚から作ったヒト胚性幹細胞(ES細胞)は、輸出入を認めないとしている。』
『総合科学技術会議生命倫理専門調査会の最終報告書案は、ヒト胚(はい)の作成や研究を法律では規制せず、強制力のない指針で対応する方針を打ち出した。しかも、指針に基づく審査を日本産科婦人科学会(日産婦)へ丸投げしようとしている。「なぜ規制が必要か」の原点に立ち返り、法律で規制すべきだ。ヒト胚やヒトクローン胚を作るには、女性から未受精卵を提供してもらわなければならず、女性の肉体的、精神的な負担が避けられない。このため、「女性を保護するための枠組み整備」「国による国内すべての研究者に対する規制」が必要という点で、調査会委員の意見は一致していた。こうした経緯にもかかわらず、ほとんど実質審議しないまま「法規制せず」の結論が出されたのは疑問が残る。また、日産婦の会告(学会規則)は自主規制にすぎないため、着床前診断の実施など、会員が意図的に規則違反をして社会的に物議をかもす事例が後を絶たない。「学会任せ」は適切ではない。市民団体「フィンレージの会」の鈴木良子さんは、ヒト胚には精子、ヒトクローン胚には体細胞の入手が必要だが、これらはまったく議論されていないと指摘、「終了の期日を重視するあまり、議論が尽くされない不十分な報告書案になってしまった」と批判する。報告書は日本の生殖補助医療や再生医療の研究にとって大きな意味を持つ。調査会はそれにふさわしい、説得力のある報告書をまとめることが求められる。』
『流産などを防ぐため受精卵診断の実施を求める夫婦21組と大谷産婦人科(神戸市)の大谷徹郎(おおたに・てつお)院長らが10日、診断を推進する会を結成、同院長はこの秋にも21組を対象に同診断を実施する方針を明らかにした。受精卵診断については、日本産科婦人科学会が「重篤な遺伝病に限る」として審査制度を設けているが、実施を認めたことはない。大谷院長は同学会審査を受けずに男女産み分けのために同診断を行ったことが発覚、学会を除名になっている。大谷院長は今後の実施も、学会に申請しない方針。受精卵診断には「命の選別につながる」との批判もあり、審査なしでの実施は議論を呼びそうだ。受精卵診断を実施する21組のうち17組は、染色体異常が原因で流産を繰り返す習慣性流産の夫婦。4組は、遺伝病のデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの診断を求めている。大谷院長は「たくさんの患者が受精卵診断を望んでいるのに実施できないのはおかしい。幸福になる権利が侵されている」と、実施に踏み切る理由を説明。同診断を多く手掛けている米エール大と提携して専門家を派遣してもらい、診断の精度を高めるとしている。推進する会には、非配偶者間の体外受精を行い同学会を除名になったことがある諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(ねつ・やひろ)院長も加わった。これとは別に、慶応大と名古屋市立大が筋ジストロフィーが子供に遺伝するのを防ぐための受精卵診断の実施を同学会に申請しており、学会は倫理委員会を一般にも公開して審議している。』
最後の記事をみるかぎり学会にはなんの拘束力もないのは明らかだ.たとえ医師と言えども生命倫理に関しては社会の認知を受ける必要があることは当然で,学会を除名されても強硬に受精卵診断を行おうというのであれば医師免許を停止すべきであろう.こんなことが許されれば金目当てに男女産み分けを公然と行う第2,第3の大谷院長が出てくるのは時間の問題である.
政府も国民にわかりやすい形でもっと議論する場を広げるべきであろう.すくなくとも社会全体に今後大きな影響を与える可能性のある問題は学会や研究者に丸投げせずにちゃんと議論をしてもらいたいものである.
『総合科学技術会議生命倫理専門調査会の最終報告書案は、ヒト胚(はい)の作成や研究を法律では規制せず、強制力のない指針で対応する方針を打ち出した。しかも、指針に基づく審査を日本産科婦人科学会(日産婦)へ丸投げしようとしている。「なぜ規制が必要か」の原点に立ち返り、法律で規制すべきだ。ヒト胚やヒトクローン胚を作るには、女性から未受精卵を提供してもらわなければならず、女性の肉体的、精神的な負担が避けられない。このため、「女性を保護するための枠組み整備」「国による国内すべての研究者に対する規制」が必要という点で、調査会委員の意見は一致していた。こうした経緯にもかかわらず、ほとんど実質審議しないまま「法規制せず」の結論が出されたのは疑問が残る。また、日産婦の会告(学会規則)は自主規制にすぎないため、着床前診断の実施など、会員が意図的に規則違反をして社会的に物議をかもす事例が後を絶たない。「学会任せ」は適切ではない。市民団体「フィンレージの会」の鈴木良子さんは、ヒト胚には精子、ヒトクローン胚には体細胞の入手が必要だが、これらはまったく議論されていないと指摘、「終了の期日を重視するあまり、議論が尽くされない不十分な報告書案になってしまった」と批判する。報告書は日本の生殖補助医療や再生医療の研究にとって大きな意味を持つ。調査会はそれにふさわしい、説得力のある報告書をまとめることが求められる。』
『流産などを防ぐため受精卵診断の実施を求める夫婦21組と大谷産婦人科(神戸市)の大谷徹郎(おおたに・てつお)院長らが10日、診断を推進する会を結成、同院長はこの秋にも21組を対象に同診断を実施する方針を明らかにした。受精卵診断については、日本産科婦人科学会が「重篤な遺伝病に限る」として審査制度を設けているが、実施を認めたことはない。大谷院長は同学会審査を受けずに男女産み分けのために同診断を行ったことが発覚、学会を除名になっている。大谷院長は今後の実施も、学会に申請しない方針。受精卵診断には「命の選別につながる」との批判もあり、審査なしでの実施は議論を呼びそうだ。受精卵診断を実施する21組のうち17組は、染色体異常が原因で流産を繰り返す習慣性流産の夫婦。4組は、遺伝病のデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの診断を求めている。大谷院長は「たくさんの患者が受精卵診断を望んでいるのに実施できないのはおかしい。幸福になる権利が侵されている」と、実施に踏み切る理由を説明。同診断を多く手掛けている米エール大と提携して専門家を派遣してもらい、診断の精度を高めるとしている。推進する会には、非配偶者間の体外受精を行い同学会を除名になったことがある諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(ねつ・やひろ)院長も加わった。これとは別に、慶応大と名古屋市立大が筋ジストロフィーが子供に遺伝するのを防ぐための受精卵診断の実施を同学会に申請しており、学会は倫理委員会を一般にも公開して審議している。』
最後の記事をみるかぎり学会にはなんの拘束力もないのは明らかだ.たとえ医師と言えども生命倫理に関しては社会の認知を受ける必要があることは当然で,学会を除名されても強硬に受精卵診断を行おうというのであれば医師免許を停止すべきであろう.こんなことが許されれば金目当てに男女産み分けを公然と行う第2,第3の大谷院長が出てくるのは時間の問題である.
政府も国民にわかりやすい形でもっと議論する場を広げるべきであろう.すくなくとも社会全体に今後大きな影響を与える可能性のある問題は学会や研究者に丸投げせずにちゃんと議論をしてもらいたいものである.
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