『信州大医学部付属病院で心臓の血管を広げる治療を受けた女性=当時(59)=が死亡したのは、医師が適切な処置をしなかったためとして、遺族が28日までに、同大に約6800万円の損害賠償を求める訴訟を長野地裁松本支部に起こした。訴状によると、女性は2000年10月に胸の痛みを訴え、心臓の冠動脈に挿入したバルーンを膨らませて血管を広げる治療を受けた際、冠動脈の内壁がはがれ、5日後に急性心筋梗塞(こうそく)で死亡した。遺族側は「医師は治療で死亡する可能性があることを説明しておらず、内壁がはがれた際の対応も緩慢だった」と主張している。同大は「訴状を受け取ってから対応を検討したい」としている。』

記事を読むとこれも結果が悪かったので医師の処置が不適切だとか治療で死亡する可能性の説明を怠ったとかが裁判での争点となるようにみえる.今までのニュースではここが争点になって医師に責任がないとされたものは皆無に等しい.今後も結果が悪くて本人が死亡すれば家族が訴えるというケースが増えるのだろう.

医師側は民事訴訟であれば損害賠償責任保険で対応できるが近頃の賠償金は保険の範囲を超えてきているし,業務上過失致死に問われればもうどうしようもないのである.血管内治療に限らず病院で治療中に死亡する可能性は常にあるわけだから,こんな形で裁判に持ち込まれることが増えればリスクの高い患者の治療は避けるしかなくなるだろう.

可能性の話をすればきりがないのだが,医学的に妥当性の高い治療であっても治療による死亡が0なんてことはあり得ない.医療行為の結果としての死亡率を下げることが治療の目的である場合にはその疾患で死亡するということが前提になっているということを患者も家族も知っておく必要があるだろう.

だから脳神経外科領域で言えば脳卒中(くも膜下出血,脳内出血,脳梗塞)や脳腫瘍は治療の有無にかかわらず死亡する可能性は常にあるということを皆さんに是非知っておいてもらいたいのです.

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