『-介護保険制度、初の大幅改正 賛否渦巻くなか一歩-
00年にスタートした介護保険制度の初の大幅改正となる05年度の改革に向けた動きが本格的に始まった。25日には、社会保障審議会障害者部会が、介護保険と障害者の支援費制度の統合を事実上容認する部会長案を了承した。保険料の徴収年齢を引き下げ、その代わりに若年層の障害者もサービス対象に含めようという案が下敷きになっている。厚生労働省は今秋にも原案をまとめる見通しだが、一部の障害者団体からは両制度の質の違いからサービス後退を心配する声も上がっている。
「統合問題について賛否がはっきり書かれていない。これでまともな議論ができるのか」。25日の障害者部会で部会長案が提示されると、委員から声が上がった。京極高宣部会長が「これは限りなく(統合へ)賛成に近い内容。こちらから(介護保険部会へ)ボールを投げなければ、議論が始まらない」と述べると、委員から批判の声が相次ぎ、京極部会長は「言い過ぎだった」と釈明した。部会長案は統合を事実上認める内容だが、反対論も依然根強いことを印象づけるシーンだった。00年の介護保険スタート時に要介護認定者は約218万人だったが、現在は約367万人。団塊の世代が高齢化していくと、介護保険財政の破たんは目に見えている。04年度の保険給付は5・5兆円だが、25年度には20兆円に膨れる。介護保険法では、3年で保険料を改定し、5年で制度内容を見直すことになっている。昨年4月の改定では、65歳以上の保険料が全国平均で13・1%アップし、月額3293円になった。保険者である市町村も赤字財政のところが増えている。一方、税財源で運営されている障害者の支援費は昨年4月に始まった。行政が必要と判断した福祉制度を障害者に与える措置制度から、障害者自らが希望する福祉サービスを選んで業者と契約する制度へと大きく変わった。初年度からホームヘルプサービスなどの利用者が急増し、100億円以上が不足する事態になった。今年度も引き続き予算不足になることが予想されている。
小泉政権の三位一体の改革で補助金が削られていく中、税財源による支援費制度の維持を危ぶむ声は強く、厚労省は支援費が始まる前から水面下で介護保険との統合を模索してきた。
厚労省は両制度を統合した場合、介護保険料を徴収する年齢を、現行の「40歳以上」から「20歳以上」に広げたうえ、20歳から必要と認めたサービスが受けられるようにする方針だ。財政の安定を考えての案だが、介護保険が始まる前から、20歳以上を被保険者とする議論が行われた経緯もある。先行したドイツの介護保険も年齢制限がないため、日本でも医療保険と同様、20歳以上を被保険者に加えるとの案に理解を示す関係者も多い。
 ◇負担増に警戒感−−反対の障害者
東京都千代田区で今月9日、全国から集まった車イスの障害者ら約700人が介護保険との統合反対を叫んだ。「厚生労働省は『障害者団体が反対することを進めることはできない』と言ってきたのに、審議会で強引に統合への議論を進めるのは許せない」「高齢者の介護と、若い障害者のサポートは根本的に質が違う」
両制度の違いは以前から指摘されてきた。介護保険は要介護認定を受けた高齢者が、要介護度による支給限度額の範囲内でサービスを受けられる。サービスの種類は、ケアマネジャーのケアプランに沿って、利用者が選択できる。一方、障害者支援費では市町村が個々の障害者についてサービス支給を決定し、障害者自身がどのサービスを選ぶかを決めるが、ケアマネジメントは制度化されていない。
介護保険では、身体の状態や痴呆の有無などをもとに要介護度が決まる。しかし、障害者のケアは日常生活上のハンディを補うだけでなく、社会参加や自立を目指す障害者のサポートが求められる。現行の要介護認定基準をそのまま障害者に適用すると、要介護度が低いランクに判定され、サービス供給量が狭められる恐れも指摘されている。また、利用者負担については、介護保険は原則として費用の1割負担(応益負担)だが、支援費は負担能力に応じた徴収(応能負担)だ。自立して暮らす障害者の多くが経済的に苦しい立場にあり、統合による負担増への警戒感は強い。
 ◇労使、障害者団体も対立
日本経団連は4月、介護保険と支援費の統合について「若年障害者には、就労支援、所得保障をはじめ、高齢者に比べ多様なニーズがあり、現行の介護保険制度の枠組みの中で一体的・効果的に障害者福祉が機能するのかどうか疑問」とする意見書を発表した。「支援費の財政支出が1年目から当初の予想をはるかに超えた原因を検証すべきだ」とし、統合に反対の立場を示した。保険料は雇用主と社員が折半して負担するため、経済界にはこれ以上負担が増えることへの反発が根強い。
一方、連合は5月20日に発表した「介護保険制度の見直しに向けて」の中で、「介護とは、高齢者特有のニーズではなく、疾病や交通事故などによる後遺症でも必要となるもので、年齢や事由を問うものではない。介護ニーズを社会全体で支え、あらゆる人の社会参加を保障するという、社会連帯に基づいた改革でなければならない」として、統合に賛成している。身体障害者などのグループに反対意見が多い中、知的障害者の親など約30万人で組織する「全日本手をつなぐ育成会」(東京都港区)は「両制度とも自己決定を尊重する理念に基づいている。急増する障害者のサービスの需要に対応し、安定した財源を保障するためには統合は必然」と発表し、意見は割れている。
 ◇介護保険と障害者支援費、統合容認の提案了承−−厚労省部会
介護保険制度と障害者の支援費制度統合問題を審議している厚生労働省の社会保障審議会障害者部会が25日開かれ、京極高宣部会長が「介護保険制度の仕組みを活用することは、現実的な選択肢の一つ」との部会長案を提案、了承された。統合を視野に入れた内容で、28日の同介護保険部会で是非が検討される。
両制度とも、高齢者人口の急増や国の補助金カットなどで財政難が表面化している。統合と同時に介護保険料徴収の年齢を引き下げ、保険財政の安定を図る狙いもある。部会長案は「統合」との言葉は使っていないが、実質的に容認している。同案は、統合された場合も障害者施策のうち介護保険制度でカバーできない分を別建てで対策を講じるよう求めている。しかし今月18日に開かれた障害者団体のヒアリングでは、条件付きで統合を容認する知的障害者団体などと、反対する身体障害者団体などに分かれた。
25日の障害者部会でも「部会長案を介護保険部会に提案することは了承するが、部会として統合に賛成するものではない」との意見が出された。

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 ◇介護保険と障害者支援費制度の比較◇

         介護保険          障害者支援費

対象  要介護認定を受けた被保険者 支給決定を受けた身体・知的障害児者

適用  要介護認定基準に基づく判断 統一的な基準はなく総合的な判断

ケアマネジメントの制度化 されている   されていない

費用負担      保険料と税金        税金

利用者負担     原則として1割負担     負担能力に応じて徴収

記事の引用が長いので詳細は割愛させていただくが,国のやることの目的ははっきりしている.それは社会保障制度にかかる税金を減額することである.障害者や要介護者へのサービスを実現するに当たっての予算の低減が目的であるのだから質の向上のために必要なことは費用の負担者を増やすことすなわち介護保険料徴収の低年齢化と地方自治体の財源への依存度を増やすことなのである.どちらにしても若年層や地方に在住するものへの負担増になることは明らかである.

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