『病院と医師の“仲人役”ともいえる医師紹介業が急成長している。背景には、医局の煩わしい上下関係から逃れ、自由にキャリアアップを図りたい医師と、地方病院の深刻な医師不足がある。しかし、好待遇を期待する医師側に対し、経営が厳しい病院の事情もあり、すんなりと交渉成立とはいかないのが現状のようだ。「医師が転職の条件にテレビと洗濯機の新調を求めているんですが」。札幌市に本社を置く医療スタッフ紹介業「キャリアブレイン」の社員から、北海道胆振(いぶり)地方にある病院の院長に電話があった。「洗濯機ねえ……」。この機会を逃すと医師定数を割ってしまう。院長は少し考えたあと「わかりました」と答え、交渉は成立した。全国自治体病院協議会(東京都)が昨年3月まとめた公立病院の医師充足率は、全国平均が103%で、関東が132%に対し、北海道76%、東北84%、北陸88%と、地方の医師不足が顕著だ。医師充足率の低下は病院経営に深刻なダメージを及ぼす。医師の確保が死活問題の病院と、転職を希望する医師の橋渡しをするのが医療スタッフ紹介業。双方の代理人として年収など待遇面を交渉し、契約が成立すれば病院から、紹介した医師の年収に応じた手数料を受け取る。現在、全国に30社余りあり、最大手「リンクスタッフ」(本社・東京)の売り上げは昨年度約10億円。手数料は年収の10―20%で毎年1・5倍のペースで増えている。同社は「市場規模は現在、数十億円に膨らんでいる」と話す。「キャリアブレイン」は、この5年間で売り上げを7倍の2億8000万円まで伸ばし、約300人の医師の転職を仲介。約4分の1は札幌や東京など大都市から道内や東北の地方へ送り出した。吉岡政晴社長は「『給料が高ければ田舎でもいい』とか、自分がやりたい医療のために医局の束縛から逃れたいといったドライな考えの医師が若い世代に増えている」と、医師側の意識変化を分析。ほとんどの場合、医師が交渉の主導権を握り、希望年収は地方に行くほど跳ね上がる。「若手医師は都内なら1200万円程度だが、仙台市で1500万円程度、岩手県沿岸になると2000万円以上でも交渉成立は難しい」という。昨年、北海道のある公立病院に医師側から提示された条件は年収2600万円。地元議会の了承も得たが、医師から「やはり3000万円以上」と求められ、病院側は「高額すぎて住民が納得しない」と、獲得をあきらめた。「年収はこだわらない。地方の小さな病院で働きたい」と地域医療に熱意を燃やす医師もいるが、3LDK以上の住宅を用意するのは当たり前、飛行機通勤まで認める病院も出てきた。4月からは新卒医に希望する病院での2年間の臨床研修を義務付ける臨床研修医制度がスタート。大学の医局は“新卒医不足”となり、病院への医師派遣が難しくなる。ある業者は「病院が医師派遣を期待して大学に寄付などしてもむだだろう。さらに紹介業の需要は増える」と鼻息が荒い。◆医師充足率=医療法の基準に従い、前年の外来・入院患者数から算出される「医師定数」に対し、実際にどれだけの医師が従事しているかを示す割合。診療報酬制度には、医師充足率が6割に満たない場合、病院の大きな収入源である「入院基本料」がカットされるなどのペナルティー規定がある。』

今朝の新聞に坂口厚労相が地方公務員として医師を登録する制度をつくって地方の診療所などへ派遣するようなことが書かれていた.国家公務員といわず地方公務員というところが押し付けがましいが,登録する医師のめどはあるのだろうか.

現実には上の記事のような紹介業がはやっているらしい.キャリアブレインからなぜかダイレクトメールが来たりもする.北海道では医師が3000万円以上を要求したとあるが,実際地方の自治体病院でそんなに払えるところはないだろう.しかも年々自治体病院の医師の給与は減る一方だ.

お金のためだけに医師をやるなら地方都市で開業するだろうし,お金より仕事や研究を優先すれば大都市の方が有利なこともある.地方公務員待遇ということは基本給や住居は地方公務員と同じで医師手当て分でほぼ24時間拘束されて救急患者に対応せよということなのか.

だが,お金や住居以外のことでも地方自治体の病院や診療所における待遇の悪化が若い医師が地方を避けている理由なのではないだろうか.先輩たちの話を聞くと昔の方が給料も多かったし素直に感謝してくれる患者さんや家族が今よりははるかに多かったらしい.要するに地方で働くことにやりがいがあったようだ.

しかるに現在はどうだろうか.医師であることに誇りをもって働ける環境にある医師はどれほどいるのだろうか.仕事に誇りをもてなくなった医師に献身的医療を期待するほうが無理である.転職の条件がテレビや洗濯機であることにこの院長はあきれたのだろうが,もはや来てくれる医師のレベルがその程度になっている病院自体の問題を考えなければいずれなくなる運命だろう.

地方の病院に転職していく医師たちの興味がお金ならそれに見合った収益を自治体病院が上げれるように診療報酬を改定しなければ現実には医師の確保はできない.地方に大都市なみの医療環境を希望するのはコストの点から無理だろう.だからやっぱり登録制にしてもまともな医師は登録しない.それとも低賃金で設備もいまいちな病院で,休みが少なくて住環境が悪くても医師としての誇りを持って働ける医師がまともなんでしょうか.

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