『小児科以外の救急担当医は子供を診療する際、90%以上が不安を感じながら診療していることが5日、厚生労働省研究班(主任・田中哲郎(たなか・てつろう)国立保健医療科学院生涯保健部長)の調査で分かった。「転送したい」と考えたことのある医師は60%を超え、実際に転送した医師も40%以上だった。小児科医不足が深刻化する中、小児救急の「空白・過疎地区」では、今も患者たらい回しの危険をはらみながら綱渡りの医療が続いていることを示した。田中部長は「専門外でも、責任感で診療する現場の医師のつらい現状は想像以上だった」と話している。
調査は2003年秋、近くに中核的な医療機関を持たない救急病院1531カ所で、小児科医以外の救急担当医を対象に実施、1211人から回答を得た。子供の救急診療時に不安が「大いにある」は63・2%、「少しある」が28・3%で、計91・5%が不安を感じていた。転送したいと思ったことは「よくある」18・2%、「時々ある」43・8%。実際に転送経験がある医師は40・6%だった。52・8%が「診療が不安な時でも転送などの手段がない」と回答。トラブルになったり、なりそうになったりした経験があると答えた医師は17・3%もいた。小児救急をめぐっては岩手県で02年9月、生後8カ月の男児が次々に「診療拒否」に遭い死亡する問題が発生。小児科医の急増が見込めず、厚労省は4月から(1)テレビ電話など情報技術(IT)網を使い、救急医が小児科医から助言を受けるシステム(2)夜間の保護者向けの相談電話体制(3)専門外の医師の小児科研修?の整備を補助対象としている。』

この記事では小児科以外の救急担当医の不安の具体的な内容については書かれていないが,救急外来の現場に立てば不安の原因は要するに専門外の患者を診てしまったがために生じる責任であることは容易に想像ができる.救急担当医であれば病気の子供を診てあげることに抵抗を感じることはそれほどないだろうが,その親と話すことにストレスを感じる機会は多いだろう.

実際,小児科医があまり必要もなさそうな点滴をしたり薬を処方する理由の大部分は患者である子供ではなくその親を意識してしまうからなのだろう.救急外来にたいしたこともない熱発で受診している子供の親などというのはそもそも家庭の医学ほどの知識もないので一から説明するより点滴で納得させるほうが手間がかからないのだから無理もない.理解できるまで説明していたら点滴が終わってしまうのでは救急外来は進まない.

私の経験ではいままでに点滴を拒否した親はいないが,点滴は必要ないと説明してすぐに納得した親は数少ないのが現実である.頭をぶつけたらレントゲン写真や頭部CT,熱が出たら点滴やタミフルが必須と思っているようだ.まったくやれやれという感じになる小児科医の気持ちもわかる.

だが,小児専門医でないとやれやれという感じる以前に小児科医でないことを親に理解してもらうということが必要になってくるからさらにストレスは高いのだろう.だから小児救急をやりたくない小児科以外の救急担当医は今後も増え続けるはずでいずれ小児救急は小児科医のいない病院では受け付けなくなると思われる.責任感で診療する現場の医師の善意は「小児科の先生には診てもらえないんですか」という無責任な親の一言で崩壊していくだろう.

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