いい加減な検診

2004年5月11日
今日は外来で患者さんと二人で困ってしまう事態が発生.その患者さんは内科開業医の検診で脳MRIをやってもらい左大脳に小脳梗塞があるから治療したほうがいいと言われたそうだ.そして抗血小板薬まで処方されていた.

大脳に小脳梗塞という検診結果の記載も?だったが,これは小さい脳梗塞というつもりだったようだ.だがこの話の落ちはここではない.私はMRIで再検査したが脳梗塞は見当たらない.どうやらびまん性白質病変(leukoaraiosis)を無症候性脳梗塞と考えたらしい.これは専門医がみればまちがえるような問題ではないのだが脳MRIを見慣れていないと脳梗塞に見えてしまうのだろう.

また抗血小板薬の投与については無症候性脳梗塞でさえ脳卒中ガイドラインではグレードC1であり,最近は出血合併症を考えて投与しない方向にあるくらいだからびまん性白質病変で投与するのは明らかにやりすぎと思うので患者さんに説明したところすんなり納得された.

ところが,脳梗塞ではないと言われたのに患者さんはあんまり嬉しそうではない.実はそこの病院で高血圧と高脂血症の薬を今までずっともらって来ているので抗血小板薬だけを断るのにどうすればよいかと考えていたと言うのである.正直に話すときっと検診結果を説明した医師も気まずいだろうということなのか.

最近は検診の弊害がいろいろ言われるようであるが,いい加減な検診を受けてその結果を心配し,今度は異常がないと言われてまた悩みが増えるというのではまるで落語の話のようである.これなら検診など受けないで占いでもやってるほうが医療事故に遭わないぶんだけいいのかも知れない.

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