おそまつな結末

2004年4月27日
『川崎市中原区の聖マリアンナ医科大東横病院(斎藤宣彦院長)で、3月末から4月初めにかけて、併用が禁止されている2つの抗がん剤を同時に処方された60歳代の男性患者が、副作用による多臓器不全で死亡していたことが27日、明らかになった。
 病院側は医療ミスを認めて遺族に謝罪している。同病院から届け出を受けた神奈川県警中原署は、業務上過失致死容疑で捜査を始めた。同病院によると、男性患者は2002年8月、同病院で大腸がんと診断され、入退院を重ねながら、手術や抗がん剤による治療を続けていた。3月に4度目の入院をした際、主治医が同25日、これまで処方していた抗がん剤「フルツロン」(商品名)の効果が期待できなくなったため、より効果の強い「ティーエスワン」(同)に切り替えた。フルツロンとティーエスワンは併用すると、白血球や血小板が急減するなど、副作用が強まるため、主治医は同日、看護師にフルツロンの投薬をやめるよう口頭で伝えた。しかし、外科の研修医が3月30日、男性がこのほかに服用していた糖尿病などの薬が切れたため、前回の処方記録をみて、薬を出す際、誤って一緒にフルツロンも処方。男性患者は主治医が誤りに気付くまでの3日間、2つの抗がん剤を服用し続け、4月13日、死亡した。斎藤院長は「がんにより、全身が侵されていた患者の死期を早めた可能性は否めない」と話している。』

今日も癌の話題になった.そういえば日本人の3大死因は癌,心臓病,脳卒中の順だったか.今度は医療事故死というのも加えたほうがいいのかも知れない.

このニュースによると副作用死ということだが,さて業務上過失致死で訴えられるのは口頭で投与中止を看護師に指示した医師なのか,指示を受けた看護師なのか,はたまた前回の処方記録をみて中止された薬を出した医師なのか.この記事では外科の研修医が誤って処方とあるが,処方指示箋などの記録に中止と記録されていなければ中止の事実を知ることはできない可能性があるから必ずしもミスとは言えないかもしれない.

口頭指示というのもよくあることで,これが各種のミスの誘因になることは日常よく経験することだが,看護師も口頭で指示を受けて実施した以上責任があると思われる.では,口頭で指示した医師には責任を問えるのだろうか.このケースで口頭指示した医師の責任が問われれば画期的な判断といえるかもしれない.なぜなら,口頭指示が違法行為という結論になるからであり,医療の現場での事故の原因がひとつ減る可能性があるからである.

さて,この記事を読んで気がついた人もいるだろうが,なぜここに病院の薬剤師の責任がまったく問われないのか私は気になった.通常は薬剤の過剰投与や併用禁忌のチェックは必ず薬剤師によってチェックされているはずだと思うのだが,聖マリアンナ医科大東横病院ではいったいどうなっているのだろうか.まさか薬剤部にコンピュータもないのだろうか.大学病院にしてはあまりにもおそまつな危機管理といわざるを得ない.

事故はすくなくとも医師,看護師,薬剤師の4人のうちだれかが気づけば防げたはずなのであるが,不幸にも関わったすべての医療従事者の目をすり抜けているのである.偶然なのかまたしても私立の医科大学の付属病院で起きた悲劇であるが,ずさんな安全管理しかできない大学病院を持った医科大学はもう不要だろう.

医師が足りないといって医科大学をたくさんつくったあげくに質の悪い医師と医療を量産してしまった国にもっとも大きな責任があると思うのだがどうだろうか.

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