件数と成績の関係
2004年4月8日『−−手術件数と関係薄く 全国のデータ分析で判明−−手術をたくさんこなした病院ほど治療成績が上がる−−。厚生労働省は4月、そんな考え方から、病院に手術件数の公開を促す制度をスタートさせたが、件数と治療成績は関係ないとする調査結果が相次いでいる。同省は毎日新聞の取材に「件数と成績の関係は科学的に立証されていない」と認めた。病院選びの目安に手術件数が注目されているが、それ以上に治療成績を公開する重要性が改めて浮かんだ。
同省は欧米などの研究論文をもとに、手術件数の多い病院ほど治療成績が高くなるとして02年、件数の少ない病院には健康保険から病院に支払う手術料を3割減らす制度をスタートさせた。その後、医療現場から反発が相次ぎ、件数が多い病院には手術料を5%上乗せする制度に4月から変えた。同時に病院内に1年間の手術件数を掲示しないと、手術料を3割減らすこととした。
しかし、東京医科歯科大の川渕孝一教授らが、00年と01年に全国の28病院から、心筋こうそくで詰まった血管を風船で内部から広げる治療のデータを集めて分析した結果、患者が退院できず死亡した率と、年間実施件数に関係はなかった。年間50件以下の9病院では死亡率は最低0%、最高17%。151件以上の11病院でも最低0%、最高21%だった。年齢や詰まった血管の本数など15項目のデータで患者の重症度を考慮して死亡率を修正しても同じだった。
東京女子医大心臓血管外科の西田博講師らは、日本胸部外科学会の全国調査データを分析し、病院ごとに、緊急手術以外の心臓バイパス手術の年間実施件数と、患者が退院できず死亡する率との関係を調べた。学会の調査は、01年に日本で実施された心臓手術をほぼ網羅している。
バイパス手術の場合、手術料の5%上乗せを受けるのは年100件以上の病院となっている。しかし年間101件以上の148病院では死亡率の最低は0%、最高4%。51〜100件の126病院のうち125病院も4%以下で、ほとんど変わらなかった。
同大の黒澤博身教授は「バイパス手術では、心臓に縫い付けた血管が数カ月後や1年後に詰まっていないかが重要。そうした実績を医師に聞くほうがよい」と言う。
厚労省保険局医療課は「手術件数と成績との関係は立証されていないが、件数は患者の関心事なので公開を推進している。参考程度に見てもらいたい」と話している。』
厚生労働省は根拠の薄い手術件数による診療報酬の加算をただちに廃止すべきだ.手術成績は当然術者によって異なってくるだろうが,手術成績で患者が医師を選べるようになると患者の多い医師は当然手術成績が悪くなるような手術は避けるようになるし,手術の少ない医師も手術成績の悪化を恐れて簡単な手術しかできなくなるだろう.これは外科の手術適応の縮小を招くことになるだろう.患者側からみればこれは治療の機会を失うことを意味する.適切な外科的治療を受けられれば助かる人たちが医師側の都合で切り捨てられることになるわけだ.
いずれにしても科学的根拠の無い恣意的な操作によって患者を特定の病院に誘導するような厚生労働省のやりかたは医療の歪みをいっそう悪化させるだけのものだろう.そもそも資本主義の考え方で医療機関を株式会社化したいのなら,手術件数の多い病院ほど診療報酬の単価を低くして安く治療を行ってくれるのでなければならないはずだ.
現在の日本の医療は言ってみれば医師や看護師などメディカルスタッフの業務には見合わない安い労働力に負うところが大きい.健康はなによりも大切だというのなら先進国で最低レベルの医療費をもっとちゃんと確保することを考えるべきだろう.このままでは質の悪い医療が標準化していく恐れがあるような気がするのだが.
同省は欧米などの研究論文をもとに、手術件数の多い病院ほど治療成績が高くなるとして02年、件数の少ない病院には健康保険から病院に支払う手術料を3割減らす制度をスタートさせた。その後、医療現場から反発が相次ぎ、件数が多い病院には手術料を5%上乗せする制度に4月から変えた。同時に病院内に1年間の手術件数を掲示しないと、手術料を3割減らすこととした。
しかし、東京医科歯科大の川渕孝一教授らが、00年と01年に全国の28病院から、心筋こうそくで詰まった血管を風船で内部から広げる治療のデータを集めて分析した結果、患者が退院できず死亡した率と、年間実施件数に関係はなかった。年間50件以下の9病院では死亡率は最低0%、最高17%。151件以上の11病院でも最低0%、最高21%だった。年齢や詰まった血管の本数など15項目のデータで患者の重症度を考慮して死亡率を修正しても同じだった。
東京女子医大心臓血管外科の西田博講師らは、日本胸部外科学会の全国調査データを分析し、病院ごとに、緊急手術以外の心臓バイパス手術の年間実施件数と、患者が退院できず死亡する率との関係を調べた。学会の調査は、01年に日本で実施された心臓手術をほぼ網羅している。
バイパス手術の場合、手術料の5%上乗せを受けるのは年100件以上の病院となっている。しかし年間101件以上の148病院では死亡率の最低は0%、最高4%。51〜100件の126病院のうち125病院も4%以下で、ほとんど変わらなかった。
同大の黒澤博身教授は「バイパス手術では、心臓に縫い付けた血管が数カ月後や1年後に詰まっていないかが重要。そうした実績を医師に聞くほうがよい」と言う。
厚労省保険局医療課は「手術件数と成績との関係は立証されていないが、件数は患者の関心事なので公開を推進している。参考程度に見てもらいたい」と話している。』
厚生労働省は根拠の薄い手術件数による診療報酬の加算をただちに廃止すべきだ.手術成績は当然術者によって異なってくるだろうが,手術成績で患者が医師を選べるようになると患者の多い医師は当然手術成績が悪くなるような手術は避けるようになるし,手術の少ない医師も手術成績の悪化を恐れて簡単な手術しかできなくなるだろう.これは外科の手術適応の縮小を招くことになるだろう.患者側からみればこれは治療の機会を失うことを意味する.適切な外科的治療を受けられれば助かる人たちが医師側の都合で切り捨てられることになるわけだ.
いずれにしても科学的根拠の無い恣意的な操作によって患者を特定の病院に誘導するような厚生労働省のやりかたは医療の歪みをいっそう悪化させるだけのものだろう.そもそも資本主義の考え方で医療機関を株式会社化したいのなら,手術件数の多い病院ほど診療報酬の単価を低くして安く治療を行ってくれるのでなければならないはずだ.
現在の日本の医療は言ってみれば医師や看護師などメディカルスタッフの業務には見合わない安い労働力に負うところが大きい.健康はなによりも大切だというのなら先進国で最低レベルの医療費をもっとちゃんと確保することを考えるべきだろう.このままでは質の悪い医療が標準化していく恐れがあるような気がするのだが.
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