『 愛媛県新居浜市の新居浜協立病院(山岡伸三院長)の34歳と25歳の女性看護師が昨年11月、入院していた市内の男性患者(当時78歳)に対し、胃へ入れるチューブを過って肺に挿入、肺炎で死亡させたとして、新居浜署は18日、2人を業務上過失致死容疑で書類送検した。 調べによると、2人は昨年11月8日朝、脳卒中の後遺症で寝たきり状態となった男性患者に栄養剤を鼻からチューブで胃に送っていたが、午前7時ごろ、チューブが抜けたのに気付いて入れ直す際、過って肺に注入し、同日午後4時10分ごろに死亡させた疑い。 同病院によると、同日午前10時ごろ、男性の容体が急変したことから、誤注入が分かり、応急措置をとったという。 同病院はミスを認めており、倉田均事務長は「書類送検されたことを厳粛に受け止めている。今後の対応については院長らと協議して決めたい」と話した。 』

以上は昔から行われている胃管による経管栄養の際のチューブを食道から胃ではなく気管から肺へ誤挿入するというよくあることを見落とした事故である.最近ではPEGといわれる簡単な手術で胃漏増設が行われているが,以下はその際の事故である.

『愛媛県立中央病院(松山市)で今月十八日、同県北条市の八十歳の男性患者の胃に栄養剤を送るチューブを入れるため穴を開ける内視鏡手術を実施中、誤って大動脈を傷つけ、男性を失血死させていたことが二十二日、分かった。松山東署は業務上過失致死の疑いで調べている。 同病院によると、手術は五十代と二十代の二人の男性医師が担当。二十代の医師が内視鏡手術を行った。手術終了後、男性の血圧と呼吸が低下。検査で体内での出血が疑われたため、輸血や点滴をした後、止血のため開腹手術に踏み切ったが回復せず死亡したという。 同病院は十九日、松山東署に届け出た。男性はくも膜下出血で別の病院に入院していたが、脳こうそくや肺炎などを併発し三月四日、中央病院に転院したという。 同病院の藤井靖久(ふじい・やすひさ)院長は「遺族に対し心よりおわびする。警察の捜査を待ち、誠意を持って対応したい」と話している。』

PEGによる胃漏増設で上記のような事故は私も初めて聞いたが,腸管を貫通して胃に入ってしまった例を聞いたこともあるし,管の交換の際に胃に入らずに腹腔内に栄養を注入して腹膜炎になり患者が死亡して業務上過失致死で訴えられたニュースも昨年読んだ.

経管栄養は胃管にしても胃漏にしても嚥下障害や意識障害のために経口摂取できない患者さんには生きていくためにどうしても必要なものであるから避けて通ることはできない.だから医師も看護師も避けては通れない.私はPEGのほうが交換の頻度が低く呼吸器感染や食道潰瘍などのリスクが低いので一度できてしまえば安全性が高いと思っている.

だが,PEGにも造設時や交換時のこのような事故のことを考えると患者のリスクの軽減と引き換えに自分がリスクを負うというような側面があり,事故に対してあまりに責任を追及するような姿勢で処理されることはPEGの普及を妨げる要因になると危惧している.

意識の清明な患者であれば体の異常をすぐに訴えるのでわかるのだが,意識障害などの患者は異常を訴えたりできないから,知らないうちに重症化するということもある.こういうことは現場の医師しかわからないだろう.

結果が悪いとミスと考える気持ちもわかるが,胃管挿入やPEGの穿刺などは実際にやっていることを直視下で見ることはできないブラインド操作の部分があるので,100%の結果を期待することは無理なのである.内視鏡や血管内手術も似たようなものだ.だから人間である医師がやる以上ミスは起こりうるということを患者さんや家族が理解できないのであれば,いずれこれらの手技を行うものはいなくなるであろう.

経管栄養を行わなければ患者さんは餓死する.中心静脈栄養も同様のリスクがあるから代用にはならない.これからは,家族に事故のリスクも説明して同意してもらうしかないのであろう.患者のリスクを本人や家族が負ってくれるのでなければ医師は診療を拒否するしかなくなるだろう.

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