『全国の大規模病院の中で、同じ施設で同じようなミスが繰り返されているケースが相次いでいることが12日、総務省の医療事故に関する行政評価・監視結果で分かった。同省は、安全対策が不十分だとして、全国すべての医療施設に事故を報告させる制度の導入や、事故防止策を検討するため全施設に設置が義務付けられている安全管理委員会を活性化させることを厚生労働、文部科学両省に勧告した。
 頻発する医療事故を受け、総務省が初めて調査・勧告した。全国の医療施設の中から、公立や民間の病院も含め計217施設を任意抽出し、01年1月から02年7月までの約1年半の事故について調査した。
 それによると、手術器具やガーゼを誤って体内に残したり、点滴投与の対象患者を間違うなど、同じ施設で同じ種類のミスを繰り返しているケースが17施設で計91例あった。死亡したり、重度障害を負う例はなかったが、同省は「一歩間違えば深刻な事態に陥る」として、安全対策の徹底を要請した。
 また、安全管理委員会は3施設で設置されていなかったほか、大学病院・国立病院の計4施設で一度も開催されていないなど、活動実績が乏しいことも判明した。
 厚労省は04年度から、大学病院や国立病院などの大規模施設に限定して事故報告制度を始めるが、総務省は「再発防止のためには全施設からの報告が必要」としている。』

『東京慈恵会医大青戸病院(東京都葛飾区)の腹腔(ふくくう)鏡手術ミスによる患者死亡事故で、日本泌尿器科学会(会員数約7400人)は12日、厚生労働省で記者会見し、事故情報を集約し、教訓として生かすための報告制度であるサーベイランス・システムの整備などを柱とする再発防止策を発表した。
 青戸病院の医療ミスは、主治医ら3人の医師が2002年11月、腹腔鏡を使った男性患者への前立腺がん摘出手術を誤り、1カ月後に死亡させた事故。
 学会は医師3人の逮捕後、特別委員会を設け、事故の医学的検証や再発防止策を検討していた。』

政府も学会も報告制度をつくるというが,これはまず事故発生の実態把握というのが第一の目的だろう.実際,病院の事故防止委員会というものも事故の発生の事実と原因,対処についての報告書の提出がなされ事故の実態の把握がなされている.現在これさえもない病院あるいはあっても活動実績がないというのはお話にならないが,事故防止委員会でこういった報告書で事故を分析しても同じ事故が何回も起きているというのが現実である.

事故で一番多いのは点滴や処方のミスで処方の書き間違い,患者の取り違えといった初歩的かつ人為的ミスである.これが不思議となくならない.次いで多いのが転倒・転落といった患者管理のミスである.これには人手不足といった問題も関係するのだが,気をつけてはいてもこれもゼロにはならない.

手術手技のミスなどは通常は考えられない事態が起きないと本当にミスとなるようなことはないはずなのだが,ニュースを見ていると確かに起きているようだ.だが,これはやはり術者に負うところが大きいと思われるので報告していくとリピーター医師の存在が明らかになることが期待できるのでいいかもしれない.

私が知っている範囲でもミスとは言えないまでも技術に問題がある術者はけっこういるような気がする.だが,報告をいくら重ねても結局事故がなくなることはないだろうし,事故と手術で回避できない緊急事態との境界はあいまいなので,結果だけを報告すればいいというものでもないだろう.

さらに問題なのは総務省や厚生労働省が医療現場についてちゃんと理解しているかも相当に疑わしいので報告すること自体が医師への責任転嫁に終わることも予想される.こうなってくると医師側は治療しないことが最善の方法になりかねない.それは,手術の適応が患者さんの治療のメリットとデメリットではなく医師側の危機管理上のメリットとデメリットで決まるようになることを意味しているのである.

正直言ってリスクの高い手術の多い脳外科医としてはやりにくい時代になったと思う.

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