緊急安全性情報
2004年2月27日『脳梗塞(こうそく)の治療薬エダラボン(商品名ラジカット)の副作用で死亡したとみられる報告患者数が、この一年で二十八人増え、累計六十八人になったことが二十六日、分かった。
脱水症状や高度の意識障害、感染症を起こした患者に投与したケースで死亡例が多い。厚生労働省は同日、慎重に薬を投与するよう医薬品・医療用具等安全性情報で注意を呼び掛けた。同省によると、脳梗塞そのものが原因で死亡したケースもあると考えられ、詳しい因果関係は不明という。エダラボンは二〇〇一年発売。これまでも副作用報告が相次ぎ、安全性情報を数回出して注意喚起している。』
ラジカットは脳梗塞の病巣の大小や発症機序にかかわらず効果が期待される唯一といっていい薬なので発売以来もっともよく使われるようになった治療薬である.したがって私も年間数百例は使っている計算になる.
もっとも問題になる副作用は腎障害で高齢者に頻度が高いような印象があるのだが,私の場合は過去2年間で記憶にあるかぎり数例で死亡例はない.もう発売されて3年目になるので年間20数例が副作用と関係して死亡しているようだが何例に投与されたかを調べるとおそらく頻度は何千例に1例くらいになるのではないだろうか?これを危険と考えるかどうか.
脳梗塞では脱水症状はよくみられることで,高度の意識障害、感染症を合併するとそれだけで生命予後が悪いのはラジカットが出てくる以前から知られていることだ.だから副作用である腎障害がおきればおそらくひとたまりもないであろう.
脳卒中治療ガイドラインの脳保護薬の項にはこう書いてある.
『【推奨】脳梗塞(血栓症、塞栓症)急性期の治療法として脳保護作用が期待される薬剤(エダラボン)を投与することが勧められる(グレードB)。(附記)本委員会の分類に従えばグレードAであるが、市販後比較的日が浅く、急性腎不全などの副作用も報告されていることより、今回はグレードBと判定された。
【エビデンス】脳保護作用が期待される薬剤について、脳梗塞急性期の治療として用いることを正当化するに足る臨床的根拠は、現在のところエダラボンに関する我が国からの報告1)のみである。エダラボン(抗酸化薬)の静脈内投与は、国内第III相試験において、脳梗塞急性期(発症72時間以内)患者の予後改善に有効性が示され、層別解析でより有効性が高かった発症24時間以内の脳梗塞患者の治療法として、本邦での使用が認可された1)(Ib)。しかし、市販後調査において、急性腎不全(重篤な腎機能障害を含む)の発現、および致死的転帰を来した症例が報告されており、重篤な腎機能障害のある患者には禁忌、高齢者や腎機能障害・心疾患・肝機能障害の合併症例には慎重投与とされ、また投与中は腎機能検査を頻回に実施し、投与後も継続して十分な観察を行う必要があるとされている(会社発表資料)。』
つまり本来はグレードAの薬なのだが,適切でない使用による副作用死があるためグレードBになっているようなのだ.例えば抗がん剤で非常に有用なものがあったとしても適切な投与を行わなければ副作用死するのは当然である.にもかかわらず不適切な使用による副作用の方をそれによって得られる効果より強調するのは無益だろう.だが,こういうことを知らないで一般人がこの記事を読むとさも危険な薬のように感じるのではないだろうか.
医療事故も薬の副作用報告も本当に問題にすべき点がきちんと一般人に理解されているとは思えない.報道により危険性だけが一人歩きするとより多くの問題や危険が生じることをマスコミは理解しているのだろうか.治療というものはいつも患者さんのためにあるものだから,本当のことを知らずにマスコミの情報に過敏に反応して治療を拒否することは患者側の利益にはならないということもきちんと知らせる必要があると思う.
脱水症状や高度の意識障害、感染症を起こした患者に投与したケースで死亡例が多い。厚生労働省は同日、慎重に薬を投与するよう医薬品・医療用具等安全性情報で注意を呼び掛けた。同省によると、脳梗塞そのものが原因で死亡したケースもあると考えられ、詳しい因果関係は不明という。エダラボンは二〇〇一年発売。これまでも副作用報告が相次ぎ、安全性情報を数回出して注意喚起している。』
ラジカットは脳梗塞の病巣の大小や発症機序にかかわらず効果が期待される唯一といっていい薬なので発売以来もっともよく使われるようになった治療薬である.したがって私も年間数百例は使っている計算になる.
もっとも問題になる副作用は腎障害で高齢者に頻度が高いような印象があるのだが,私の場合は過去2年間で記憶にあるかぎり数例で死亡例はない.もう発売されて3年目になるので年間20数例が副作用と関係して死亡しているようだが何例に投与されたかを調べるとおそらく頻度は何千例に1例くらいになるのではないだろうか?これを危険と考えるかどうか.
脳梗塞では脱水症状はよくみられることで,高度の意識障害、感染症を合併するとそれだけで生命予後が悪いのはラジカットが出てくる以前から知られていることだ.だから副作用である腎障害がおきればおそらくひとたまりもないであろう.
脳卒中治療ガイドラインの脳保護薬の項にはこう書いてある.
『【推奨】脳梗塞(血栓症、塞栓症)急性期の治療法として脳保護作用が期待される薬剤(エダラボン)を投与することが勧められる(グレードB)。(附記)本委員会の分類に従えばグレードAであるが、市販後比較的日が浅く、急性腎不全などの副作用も報告されていることより、今回はグレードBと判定された。
【エビデンス】脳保護作用が期待される薬剤について、脳梗塞急性期の治療として用いることを正当化するに足る臨床的根拠は、現在のところエダラボンに関する我が国からの報告1)のみである。エダラボン(抗酸化薬)の静脈内投与は、国内第III相試験において、脳梗塞急性期(発症72時間以内)患者の予後改善に有効性が示され、層別解析でより有効性が高かった発症24時間以内の脳梗塞患者の治療法として、本邦での使用が認可された1)(Ib)。しかし、市販後調査において、急性腎不全(重篤な腎機能障害を含む)の発現、および致死的転帰を来した症例が報告されており、重篤な腎機能障害のある患者には禁忌、高齢者や腎機能障害・心疾患・肝機能障害の合併症例には慎重投与とされ、また投与中は腎機能検査を頻回に実施し、投与後も継続して十分な観察を行う必要があるとされている(会社発表資料)。』
つまり本来はグレードAの薬なのだが,適切でない使用による副作用死があるためグレードBになっているようなのだ.例えば抗がん剤で非常に有用なものがあったとしても適切な投与を行わなければ副作用死するのは当然である.にもかかわらず不適切な使用による副作用の方をそれによって得られる効果より強調するのは無益だろう.だが,こういうことを知らないで一般人がこの記事を読むとさも危険な薬のように感じるのではないだろうか.
医療事故も薬の副作用報告も本当に問題にすべき点がきちんと一般人に理解されているとは思えない.報道により危険性だけが一人歩きするとより多くの問題や危険が生じることをマスコミは理解しているのだろうか.治療というものはいつも患者さんのためにあるものだから,本当のことを知らずにマスコミの情報に過敏に反応して治療を拒否することは患者側の利益にはならないということもきちんと知らせる必要があると思う.
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