製造者責任

2003年12月30日
《エイズウイルス(HIV)に感染した献血者の血液が、日本赤十字社が行う高感度の核酸増幅検査(NAT)をすり抜けて出荷され、この血液を輸血された患者がHIVに感染していたことが29日、同社の調べで分かった。99年のNAT導入以降、HIVのすり抜けは2例目だが、実際に汚染血液が患者に輸血されたのは初めて。》

こういう事態になることは当然予想されたことだ.以下にあるがそれは日赤もわかっていた.

《厚生労働省は29日夕、血液事業部会運営委員会を緊急開催し、日赤の田所憲治・事業局技監は「こういう事態は起こり得ると考えていたが、大変残念かつ深刻に受け止めている」と述べた。薬害エイズ被害者の大平勝美委員(はばたき福祉事業団理事長)は「起こり得ると考えていたのであれば、対応が遅かったのではないか」と指摘し、早急な安全対策を求めた。》

大平氏の意見は一見もっともだが,時間や費用を考えると難しいのが現実だろう.

 《献血血液の検査では、献血者がウイルスに感染した直後で、抗体やウイルスが微量のため検査をすり抜けてしまう期間(ウインドーピリオド)がある。》

最近また輸血によるB型肝炎の感染例の報告もあったが,現在の献血輸血のシステムでは完全な予防は不可能だろう.

輸血の選択肢として自家血輸血をもっと進めるとか親族や知り合いからの献血で輸血できるようにするとかして患者が自分で安全性を高められる方法があってもいいのではないだろうか.

ちょっと変に思うかも知れないが,私がこんなことを言うのには献血を自分のHIV感染のチェックのために行っている人が存在していることである.そう善意のみで献血している人には悪いが現実には自分の血液データが知りたくて献血している人もいるのである.

もし,自分がHIVに感染しているかどうか心配になる人が増えるとさらにリスクは増大するはずである.

先日も書いたが日本のHIV感染者は増加しているのである.つまり感染者の増加とともに輸血や血液製剤でのHIV感染のリスクも増大しているのである.

脳外科医の立場では輸血はなるべくしない.血液製剤も必要最小限にするという基本を忠実に守る以外に自分の患者さんを守る方法はない.

もっとも輸血が足りなくて周術期死亡するよりはHIVに感染するリスクがあっても輸血するべきなのだろうが,これにも患者の同意が必要なのはいうまでもない.

PL法というのがあったが,血液製剤にも製造者である日赤で保険をかけて感染症にかかったら最後まで面倒をみてあげるようにしたらいいのではないだろうか.

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